[雑感]大型店はどこへ行く(食・小売ビジネスパート2)
昨日に続き、食・小売ビジネスで感じることをまとめたいと思います。店舗の小型化は、明確なトレンドでしょう。消費増税後にコンビニが苦戦しているのも、スーパーの小型店が首都圏で拡大しているからではないでしょうか。利便性に優っていたコンビニが、小型スーパーの出現でその利点が薄れ、価格競争力で劣勢に立たされている。これが実情だと思います。
ただし、小型スーパーはそう簡単に成功するものでもありません。一番の理由は、総菜・生鮮品の廃棄率が高まるからだと認識しています。数年前でしょうか、ライフコーポレーションの社長も、廃棄の問題で小型店出店に二の足を踏んでいる、という旨の発言を、講演会か何かで聞いたことがあります。店舗面積が小さくなっても、閉店の1時間前に総菜をゼロにするわけにはいきません。鮮魚・精肉もしかり。だからといって、小型店の最後1時間での販売力は、集客力の違いにより大型店には劣るもの。だから、廃棄量を販売量で割った廃棄率は、小型店の方が高くなるのです。そして、それは損益にモロに響いてきます。
小型店が増えた要因は、この廃棄の問題を販売力とコスト削減である程度緩和させたからでしょう。また、よく耳にするのが、大型店の場合店内調理をしていた業務を、店外(セントラルキッチンなどの工場)に委託することで、店舗運営コストを引き下げ、小型店の損益が改善しているようです。省スペースでの作業を可能にさせる機械の導入もあるでしょう。
店舗の小型化は、飲食店でも起こっているようです。
居酒屋の三光マーケティングフーズは小型店の出店を加速する。新業態の焼鳥店や焼肉店を多店舗展開し、既存のうどん店のてこ入れも急ぐ。総合居酒屋の大型 店で成長してきたが競合激化で失速。居酒屋に代わる成長事業にするはずだった焼き牛丼店「東京チカラめし」も昨年、大半の店を売った。2015年6月期は 3期連続で最終赤字の見通し。投資回収の早い小型店で立て直しを急ぐ。(2015年2月23日付 日経MJ)
あくまで一企業の事例でしかありませんが、最近大型店の出店はずいぶんと減ったなぁ、という実感はあります。消費者の利便性ニーズの高まりでしょうか。大型店を一店舗出すなら、二店舗に分けた方が商圏は広がり、来店ハードルは下がります。好立地の物件が少ないというのも、理由でしょうか。小さい方が、行列ができやすく、それが集客効果を発揮するというのもあるでしょう。他店舗展開するナショナルブランドの飲食チェーンよりも、単独店や小規模チェーンを好む、消費者ニーズの変化も影響していると思われます。
【飲食店店舗の小型化が進む要因】
- 利便性ニーズが高まっているため
- 好立地が少ないため
- 小型店の方が行列はできやすく、それが集客に好影響を及ぼすため
- 大型ナショナルチェーンよりも、小型単独店・小規模チェーンの方が好まれるから
そう言えば、ワタミも、企業ブランドを隠した専門店で成功をしていますね。大手の小規模専門店の出店は、単独店・小規模チェーンにとっては、脅威そのもの。原材料調達力や人材獲得力など、仕入れ面で大手は優位に立つからです。サービス面と変化(新メニューの導入)など大手が苦手とする分野で、いかに差別化するか勝てるかが、中小飲食店の勝負どころでしょう。
商圏の限られる小型店が増えれば、何が起こるか。より地域に密着した、ローカル広告の需要が高まるのではないでしょうか。商圏が狭いだけに、大きな広告を打っても意味がありません。飲食店の場合はなおさら、限られた客席という制約条件があるだけに、予算を掛けて大きな広告をして大勢来店しても、結局食べたい時に食べられず、来店客に迷惑を掛けるのがオチ。リピート客を育てる意味でも、予算の低いローカル広告を多数打つ方が効果的で、収益安定にも寄与します。
そう言えば、地元のグルメシティ(ダイエー系スーパー)が、毎週発行していた日曜日のチラシを止めました。全く廃止したのではなく、毎週から需要の高い週だけの発行に切り替わったようです。他のダイエー店舗では、新聞折り込みをしないネットだけのチラシ発行を行っているようなので、紙からネットへのシフトでしょうか。思わず目に止まることのある紙とは違い、ネットは自分でアクセスしないと情報を得られません。紙からネットへのシフトは、リピーター重視への転換なのかもしれません。
☆今日のまとめ☆
スーパー・飲食店でも小型化が進んでいる。
この背景には、消費者の利便性ニーズの高まり、全国チェーンよりも単独店・小規模チェーンの選好、好立地物件の不足、行列の集客効果の高まりがあるのではないか。
小型店が増えれば、よりローカルな広告需要が高まり、リピーター獲得を目指す企業が増えるだろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
人口減少で小型店が増加すると、店舗あたりの収益は悪化する確率は高まります。
もちろん、店舗での優勝劣敗があるでしょうが、居抜き物件が今後増えそうです。