ケーニヒスクローネの宅配サービスを黒字化するには?
前回取り上げたように、ケーニヒスクローネが宅配サービスを始めます。消費者から見れば、大変ありがたいサービスなのですが、企業からしてみれば、コストアップに繋がりかねません。ケーニヒスクローネとしては、宅配サービスをすることで、新規顧客を開拓できると考えているのでしょう。さらに、既存顧客の利用頻度が高まると読んでいるのでしょう。つまり、客数が増えると予測するからこそ、こういうコストのかかるサービスを行うのです。
しかし、実際に客数が増えるかどうかはわかりません。これまで店頭で買ってくれていた人が、宅配サービスを利用すれば、宅配料は無料なので、宅配コストだけ利益が削がれます。こういうリスクもあるからこそ、これまで洋菓子店の宅配サービスがなかったのだと思います。
チラシを見る限り、宅配料が無料になる最低購入金額の規定はありません。かといって、対象商品がホールのケーキだけというわけではなく、300円台のカップ入りフレッシュケーキや1000円以下の焼き菓子もチラシには掲載されています。注意書きがないということは、カップケーキや焼き菓子も宅配できると捉えることができます。もし、300円のカップケーキだけの注文が入った場合、それだけでも無料宅配を行うのでしょうか。利益が減るどころか、赤字になり兼ねません。クローネのエキスプレスサービスは、ケーニヒスクローネにとって大きな賭けになるかと思います。
そこで、宅配サービスを黒字化するための方法を考えてみました。
【クローネのエキスプレスサービスを黒字化する方法】
[1] 割安なセット商品を作る→単価を引き上げるため
[2] バースデーケーキの定期販売を行う→ベースとなる売上を作るため
[3] バースデーケーキのカスタマイズをより具体的に示す→客数を増やすため
1は、例えばバースデーパーティーセットを作ってはどうでしょうか。このセットには、ホールケーキと洋菓子・クラッカーなどが付いています。セットさえ買えば、簡単なバースデーパーティが行えるというものです。このセットを、単品購入よりも格安で販売しても、バースデーケーキ単品の単価よりも高くなるでしょう。1件あたりの単価(客単価)を上げれば、客単価に占める宅配コストの割合が下がるので、黒字化しやすくなります。忙しいサラリーマン用に、出張セットなどを作っても単価引き上げを図ることができます。
2は、生協の個配をバースデーケーキ版です。バースデーケーキは1年に1回なので、家族2人以上を対象にしてもいいかもしれません。1年に2回以上宅配できる家族が増えれば、宅配事業のベースとなる売上を確保することができます。この売上だけで宅配コストの固定費分を賄えれば、黒字化しやすくなります。携帯電話の2年契約みたいに、5年契約の定期販売コースにしてもいいかもしれません。もちろん、定期販売コースの場合は、バースデーケーキ自体を割引きます。
3は、すでにチラシに記載されていますが、バースデーケーキのカスタマイズについてより具体的に提案できれば、バースデーケーキの売上を増やせるのではないでしょうか。現状のチラシに掲載されているのは、「ご予算に応じて承ります。サイズや内容はご相談ください。」という文言のみ。これでは、実際にどのようなカスタマイズができるのか、わかりません。バースデーケーキに対する消費者ニーズとして考えられるのは、
ケーキを小さくする代わりに具材・デコレーションを増やす
というもの。バースデーケーキとして掲載されている一番小さなサイズは、4~6人の15センチ。世帯人数が減っていることを考えると、これでは大きすぎるのではないでしょうか。さらに、高齢化が進んでいることも考慮に入れると、量よりも質を求めたい消費者も増えているかと思います。ならば、「15センチと同じ価格なら、12センチのケーキはこうなる」というケーキの画像があれば、より注文が増えるように思えます。ちなみに、私自身も12センチまたはそれ以下のバースデーケーキ・クリスマスケーキを探すのに、いつも苦労しています。カスタマイズがよりしやすくなれば、これまで他社のバースデーケーキを購入していた消費者が、ケーニヒスクローネの宅配サービスを利用するようになるかもしれません。これが客数アップにつながり、黒字化しやすくなります。(もちろん、カスタマイズによって客単価が下がるリスクがありますが。)
このように、客単価アップ・基礎となる売上・客数アップを考えた商品提案を行えば、コストアップ要因になりかねない宅配サービスで利益が出やすくなると考えます。
☆ 今日のまとめ☆
宅配サービスは、客数アップにつながるかもしれないが、逆にコストだけが増えることになり兼ねない。
そこで、客単価アップ・ベース売上・客数アップを考えた商品提案を行えば、黒字化しやすくなるのではないか。
マーケティング・ビジネスのヒントに関するブログも書いています
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
クローネのエキスプレスサービスでは、周年記念特別ケーキも作れるようです。(記事最初の画像)
これは、法人需要を考えたものですね。
法人への販売も、客単価アップになりますね。
☆経営コンサルタント 石原明さんの言葉☆
「この感覚が理解できれば、たとえば新聞やテレビで誰かがやっているのを見たら、「これはこういうつもりでやっている」というのがわかります。そして、それを自分の仕事に置き換えてどんどん使えるようになります。だれかがそのへんで真剣に穴を掘っていたら、これはこういうために穴をほっているな、というのがわかるようになれば、たくさん応用がきくということです。」
(『気絶するほど儲かる絶対法則 売れるしかけと勝てるしくみの作り方』より)
※ポッドキャストでいつもお世話になっています。この番組は本当に勉強になります。
※創業者・経営者・コンサルタントの心に残る言葉、元気になる言葉を紹介しています。