欠品は本当に悪なのか?
by courtesy of Andrew Dallos
日経MJに大変面白い記事がありましたので、紹介したいと思います。
日本の小売業の店舗オペレーションは世界最高レベルにある。接客は丁寧。棚は常に商品で埋め尽くされ、陳列方法も工夫されている。それに慣れた日本の消費 者が、世界最強の小売業者として知られる米ウォルマートの店舗を訪れると、たいてい違和感を覚える。スペースの割に商品のバラエティーは限られていて陳列 棚には空きが目立つ。接客や清掃状況も日本と比べるとお粗末だ。(2013年7月13日付 日経MJ)
この記事では、欠品と営業利益率とのトレードオフの関係が述べられています。日本の小売店は、品揃えも多く欠品が少ない一方で、営業利益率が概して低い。一方、世界最大の小売業・ウォルマート・ストアーズは、品揃えも店舗面積ほど豊富ではなく、欠品した商品も多い一方で、営業利益率が5%と日本よりも高いのです。この営業利益率の差が、欠品に対する許容度から来ると、著者は述べています。
念のため、日本の主要総合スーパー・スーパーとウォルマート・ストアーズとの営業利益率をまとめると、次のようになります。
【日本の主要総合スーパー・スーパーとウォルマート・ストアーズの営業利益率】
[セブン&アイホールディングス]3.4%
[イオン]3.8%
[ライフコーポレーション]1.4%
[ヤオコー]4.4%
[ウォルマート・ストアーズ]6.0%
※すべて最新決算資料の数字から算出
※リンク先はPDFなので注意
既存店が好調なヤオコーを除けば、営業利益率はウォルマート・ストアーズの半分程度であることが、わかるかと思います。
欠品をすれば、顧客離れを引き起こすリスクがある一方で、欠品ゼロを闇雲に目指せば、在庫コストは膨大に掛かります。ウォルマート・ストアーズのような欠品の多い売場は、要求レベルの高い日本人に受け入れられないかもしれませんが、そこまで欠品を恐れる必要があるのか、というのが筆者の主張です。
では、本当に欠品は必ず回避すべき課題なのか?決して、そうではないように思えます。というのも、もし欠品が起こったならば、代替品を提案すればいいからです。一部の顧客を失うかもしれませんが、その分在庫管理コストを削減できれば、利益は残ります。
また、欠品許容度を商品毎に変えるというのも、一つの考え方です。つまり、販売数量の大きな人気の高い商品は、在庫を多く持つことによって欠品をできるだけ避けるようにし、一方さほど数量が売れないニッチな商品は、ある程度の欠品を許容するのです。これにより、一部の商品の在庫管理コストが減ることになり、営業利益率の向上につながります。
なぜ、この記事を取り上げたかというと、欠品=悪というのが小売業界(特にスーパー)の常識だからです。欠品をある程度許容するのは、この常識を逆を行くという逆張り思考。ある程度の欠品を許容し、その分サービスで補い、営業利益率の向上を目指す小売企業があっても、不思議ではありません。
☆今日のまとめ☆
日本の小売業の営業利益率が低いのは、欠品=悪と考え、必要以上の在庫コストを掛けているからではないか。
この常識を疑い、欠品をある程度許容すれば、営業利益率を向上させることができる。
これも、逆張り思考である。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
欠品で思い出しましたが、コンビニのサンクスは欠品が多いですね。
あのスカスカの棚を見ると、店舗自体がとても寂しく感じます。
その結果、客数が減っているのかもしれません。