大丸松坂屋の店舗別売上からわかる、立地別売上・販売戦略の違い。
by courtesy of Joel Abroad
前回、大丸松坂屋のおせちを取り上げましたが、その時に月次売上(PDF)を調べました。すると、その月次データに店舗別データも付いていたので、店舗別の数字を比較したのですが、その結果大変興味深いことがわかりました。立地によって、売上構造に大きな違いがあるのです。
【立地による売上構造の違い】
[都心立地(大丸東京、松坂屋名古屋)]客数増による売上増
[神戸]客単価増による売上増
[地方立地(下関大丸、松坂屋高槻、大丸山科]客数増でも売上減
都心立地は、客数増がそのまま売上増につながっているので、特に驚きはありません。改装効果により客数が増加しており、客数の増加は食料品の売上増加にも結びついています。目新しさもありますが、都心の消費者は、アベノミクス効果により百貨店の利用を増やしているのかもしれません。
大丸神戸店は、大丸松坂屋の店舗の中でも特別であり、客数が減少しているのにも関わらず、売上が拡大しています。これは、客単価の増加によるものでしょう。つまり、既存顧客の一部が高額商品を購入したからだと思われます。改装効果による昨年8月の客数大幅増の反動が出たのは、間違いありません。大阪・梅田にグランフロント大阪が出来たことで、西播地区の顧客が梅田に流れたことも考えられますが、それならば梅田店の売上が増加してもいいもの。しかし、現実には大丸梅田店の客数・売上とも減少しているので、グランフロント大阪で買い物したのでしょうか。いずれにせよ、大丸神戸店は、改装効果が剥がれ落ち、従来からの顧客が残り、高額品を買ったのは間違いないかと思います。
最後に地方立地ですが、こちらは客数は増加しているものの、売上が減少しているので、客単価が大きく下落したものと思われます。値下げや低価格品の導入により、集客を行ったからでしょう。実際、大丸山科店のサイトを見ると、トップページにデパ地下のチラシが掲載されているので、食料品の値下げで集客を図っているように思われます。食料品の販売に力を入れるのは、スーパーやSC(ショッピングセンター)との競争が激化しているのかもしれません。
このように立地別に売上の成り立ちを見ると、百貨店業界における立地別の販売戦略も見えてきます。
【百貨店業界の立地別販売戦略】
[都心立地]改装・目新しさによる客数増を目指す
[地方中心都市立地]既存顧客の囲い込みと客単価増を目指す
[地方立地]値下げ・低価格品導入による客数増を目指す
百貨店だけでなく、小売全体に同様の立地別販売戦略が当てはまるかもしれません。
☆今日のまとめ☆
大丸松坂屋の立地別売上構成を見ると、その戦略の違いがよくわかる。
都心立地は、改装・目新しさによる客数増を目指し、地方中心都市立地は、既存顧客を囲い込み、客単価引き上げを目指す。
一方、地方立地は、値下げ・低価格品導入による客数増を目指す。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
先日、初めて山口とうふを食べました。
ゆば豆腐は本当に格別です。
少し高いですけど、この味はスーパーでは買えませんねぇ。