大量生産品離れという消費革命にどう立ち向かうか?
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アメリカでも大量生産品の販売不振が起こっているようです。アメリカ版ボリュームゾーン不況ですね。その筆頭格は、食品。ベビーブーマー世代が愛した大手メーカーの加工食品が売れない。だから、大手食品メーカーの業績も低迷しているようです。その背景には、「よりヘルシー、より美味しい、より特徴的な商品」を好む消費者ニーズがあります。まだアメリカほどではないにしろ、イオンの不調ぶりを見ると、アメリカのトレンドが日本で始まりそうにも思えます。
外食でも他店舗展開のチェーンは、比較的苦しいです。スタバのように、飲食とは別の価値(サードプレイス?)を提供していれば別ですが、マクドナルド・和民など低価格で集客を最大化するモデルのチェーンはいずれも不振。「より特徴的な商品」を好むアメリカの消費者ニーズは、日本の外食には当てはまっています。ワタミの中でも、総合居酒屋の和民はダメですが、料理特化型の居酒屋は好調だとか。ただ、料理特化型の飲食店も、最近相当増えてきたので、料理以外での差別化も必要だと思いますが。
食品に話を戻すと、大量生産品が売れなくなるとどうなるか?もう売上が安定しているトップブランドだけ置いとけ、という話になります。この背景には、PB商品の増加により売場が確保できないということもありますが。顧客が付いている特殊商品が出てくると、さらに大量生産品の売場は縮まることになります。だから、大手メーカーは、量販店以外での販路開拓に力を入れているのでしょう。
その筆頭格は、ネスレ日本。カフェネスカフェやネスレアンバサダーは、いずれもネスレ主導での販売であり、量販店主導での従来型販路とはその性格が全く異なります。高岡社長も、日経MJで公言しているように、いろいろコストの掛かる量販店(特にコンビニ)から直販へ力点を移しているようです。ネスレ日本ほど過激(?)な動きではないにしろ、グランカルビーなどを見る限り、大手食品メーカーは量販店の一本足打法からの脱却を目指しているように思えます。
今後、小型店が増えてくると、さらに売場面積は小さくなり、売場コストは上昇。もう中小メーカーの出る幕は無くなるかもしれません。セブングループ内でのセブン-イレブンの絶好調ぶり、大型店のイトーヨーカドーの不振ぶりを見ると、もう大型店は不要という話まで出てきそう。ちなみに、仮に大型店が少なくなればなるほど、その魅力は増す可能性はあるので、一定数は残るでしょう。また、地方(特に過疎地)などでは、AZスーパー?の成功事例もあるように、超大型店に需要はまだまだあります。(ただし、地方のすべての物販ニーズを掬う必要がありますが)話を戻しますと、小型店増えることは、中小メーカーの淘汰が進むことを意味します。
ただ、ここで矛盾が生じることになります。「小型店の増加」「品揃えの縮小」を進める販売者がいる一方で、消費者は「より特徴的な商品」を求めているのです。この矛盾に商機を見出したのが、カルディなどの小型食料品店でしょうか。まだそれほど大きな成功を収めているとは思えませんが。
「より特徴的な商品」が売れるにはどうすればいいのか?大量生産品よりも価格は高いですから、その高さに納得できるだけの情報を提供する必要があります。それができないばかりに、大型店の多くはあまり売れない商品であふれたのでしょう。(もちろん、手早く買い物を済ませたいという消費者ニーズもありますが)カテゴリー別の定番棚には多種多様な商品が置いてありますが、ただ並べてあるだけ。これではパッケージを取って比べない限り、商品情報を入手することはできません。だから、さほど売れないのでしょう。
その点、ネット通販には強みがあります。掲載できる商品情報は、無限大。伝えたいだけ掲載すればいいのです。さらに、利用者の情報(所謂口コミ・レビュー)まで掲載できるので、その商品の本当の価値を伝えることが可能です。「より特徴的な商品」を売るには、ネット通販が適しているのかもしれません。
しかし、食料品は概して単価が低いもの。ネット通販で売るには、送料というネックが付きまといます。送料が掛らない点は、実店舗の勝ち。送料の掛らない実店舗で、単価に納得できる情報を伝えられるかどうかが、消費者が求める「より特徴的な商品」の売れるかどうかを左右することになります。
そう言えば、前回取り上げましたが、ユニクロが接客に力を入れるようですね。これも、値上げした価格に納得できる情報を伝えるため、と考えれば納得です。外食でも然り。マックの売上不振が続くのは、ロコモコバーガーなどの単価の高い商品の価値をうまく伝えられていないからではないでしょうか。100円マックを拡充したのだから、ある程度の集客はできるはず。来店客に、どうやってロコモコバーガーの価値を伝えられるか。単にポスターを設置するだけでは、力不足。かといって、カウンターで売り込むと逆に客離れが起きそう。難しい問題です。
まとめると、大量生産品離れ・特徴的商品を求める消費者に、どうやって買ってもらうかは、単価に見合った特徴的商品の良さを伝えるしかないということになります。スーパーでとある物産展が行われており、その商品がただ置いているだけで見向きもされないのは、当然と言えば当然なんですね。
☆今日のまとめ☆
GMS・多店舗型飲食チェーンが不振なのは、大量生産品離れという消費革命が起きているからだろう。
一方で、より特徴的な商品を好む。
単価の高い特徴的商品を売るには、その単価に見合った価値を伝えなければならない。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
商品情報が明らかに不足していると感じますね。
あくまで実生活での実感ですが、例えば新商品でも店頭に並んで初めて知ることがほとんど。
しかし、それまでにセレクションが行われているので、消費者には知らされないまま市場から退場する商品が多々あります。
そして、店頭に並ぶのは販促費がタンマリある大手メーカーの商品ばかりになり、品揃えが競合店舗と大差なくなり、価格競争突入。
これが、スーパーで価格競争が無くならない理屈です。
これにメスを入れるのは、やはり特徴的な商品を売るしかないわけで、それには商品情報を適切に提供しなければ、今の目の肥えた消費者は納得して買ってくれない。
でも、そんな面倒なこと、売りにつながるかわからないことはできない。だから、確実に売りにつながる安さで勝負する。
だから、儲からないのですね。
ちなみに、セブン-イレブンのPLで「コンビニ=儲かる」と考えるのは早計。
セブンなど大手コンビニは、そのほとんどの店舗がFCなので、収益の大半はFCフィーであり、売上さえ拡大できれば利益も付いてくる仕組みです。
コンビニでおにぎりやおでんが値下げ販売されているのは、売上増によるフィー収入拡大が見込めるからでしょう。(コンビニ会計については間違えがあれば、コメントにて教えてください。)