コストコになれなかったジャパンネット銀行、その理由とは?
昨日、日経新聞でネット銀行に関する記事を見つけました。
インターネット専業銀行のジャパンネット銀行は2日、月額189円の口座維持手数料を7月から廃止すると発表した。これまで口座維持手数料を徴収している銀行はあまりなかった。顧客からの要望や、収益基盤が安定してきたことなどを踏まえ廃止を決めた。
(日本経済新聞電子版より)
ネット銀行は、メガバンクよりも手数料が割安で、利便性も高く、さらに普通預金金利が高いので、積極的に活用しています。ただ、知らない間に、これらのメリットが改悪されることがよくあるので、新聞記事やネットニュースには目を光らせています。今回のニュースは、利用者にとっては嬉しいニュースです。
この口座維持手数料は、2000年頃に銀行への新規参入が盛んになった頃、新たに導入されました。従来の都市銀行や地銀、信用金庫など既存金融機関にはなかった課金であり、驚いた方も多かったと思います。私自身は、最低預金残高以下の場合に口座維持手数料が課されたシティバンクに口座を持っていたので、日本の銀行も欧米の金融機関に近づいたのだと感じました。
確かな記憶はないですが、確かジャパンネット銀行が口座維持手数料を導入した時、シティバンク同様、ジャパンネット銀行も口座維持手数料が無料になる最低預金残高を設定していたと思います。コスト意識の高い私は、もちろん最低残高以上の預金をした記憶があります。
ジャパンネット銀行側も、従来の銀行にない高い利息を提供する代わりに、口座維持手数料や最低預金残高を設定したのだと思います。月々189円支払っても、それ以上の利息が付けば、問題ないだというという思惑があったのでしょう。そして、ソニーや三井住友銀行などの大企業で作った新しいネット銀行が口座維持手数料という新たな文化を吹き込めば、他の新規参入銀行(イーバンクやソニー銀行、アイワイバンク)も、同調するだろうという憶測があったのだと思います。しかし、それはもろくも崩れました。
私の知っている限り、口座維持手数料を設定したのはジャパンネット銀行だけだと思います。となると、消費者は、
ジャパンネット銀行は、他の新しい銀行よりも高くつく
と感じることになります。その結果、口座獲得に大変苦労したのではないでしょうか。それを物語るように、口座維持手数料が永久無料になるプランを導入しました。しかも、このプランはそれほどハードルが高いわけではありません。クレジットカードの作成、ポイントサイトの無料会員登録、証券口座の開設など、全くコストのかからないものがほとんど。この時点で、口座維持手数料は事実上廃止したことになるかと思います。
口座維持手数料を導入したジャパンネット銀行の思惑が外れた原因は、とても簡単です。消費者が、
お金を増やすために預金するのに、なぜお金を払わなければならないのか?
という疑問を持ったからに過ぎません。当たり前と言えば当たり前です。もともと、銀行口座を開設するのは無料。しかも、お金を増やすために預金するのです。にもかかわらず、口座維持手数料がかかるとなると、何のために預けているのかわかりません。さらに、低金利なので、口座維持手数料を賄うほどの利息は望めません。庶民感覚からして、口座維持手数料を支払ってまで口座を開設することは、ありえないのです。
ただ、そう簡単に片付けるわけにもいきません。というのは、
無料で使えるサービスに対して、会費を設定している企業がある
からです。もちろん、このビジネスモデルは成功しています。その代表格はコストコ。
コストコは、ディスカウントストアの部類に入ります。だから、ドン・キホーテなどと競合します。さらにもっと大きな括りで言えば、小売店です。ディスカウントストアにしても、小売店にしても、その大部分のお店は無料で店内に入ることができます。商品を購入する場合のみ、費用が発生します。
一方、コストコは、店内に入るには有料会員にならなくてはなりません。購入しない場合でも、その会費は返金されません。(ただし、クレームなどがあれば、いつでも会費を返金するポリシーです。)コストコで買い物をするには、どうしても有料会員にならなくてはいけません。だから、
無料で使えるサービスに対して、会費を設定している企業=コストコ
ということになります。
この会費は、ジャパンネット銀行で言う口座維持手数料と同じです。ただ、ジャパンネット銀行と違うのは、コストコは会費制小売店というビジネスモデルを成功させているということです。コストコが成功した要因として
- 会費を払ってでも、それ以上に商品を安く購入できるから。
- コストコ店内の買い物自体が娯楽になり、テーマパークなど娯楽施設と比べると格段に安い入場料だから。
などが考えられます。これは、消費者がコストコから得られるベネフィットと言うこともできます。ジャパンネット銀行も同じようなベネフィットを提供できれば、コストコのように口座維持手数料という新しい収益モデルを成功させることができるのではないでしょうか。そのためには、
口座維持手数料というコスト<ジャパンネット銀行から得られるベネフィット
でなければなりません。例えば、
- 競合するネット銀行よりも預金金利を高くする。
- 通販企業と提携して、送料無料にする。
- 預金残高に対して、ポイントやマイルが毎月貯まる。
- 本来有料のファイナンシャルプランナーへの相談を、無料でできる。
- 金融の専門家による有料セミナーに無料で参加できる。
など。
同じ金融サービスで考えると、無料で持てるクレジットカードがある中で、年会費のかかるカードもあります。しかも、年会費無料のカードを有料化する動きが多いことを考えると、クレジットカード業界は年会費でも収益を稼ぐというビジネスモデルに変わりつつあるように思えます。このような動きを考慮に入れると、ジャパンネット銀行の口座維持手数料も、サービス内容を充実させることにより、存続できたのではないかと思います。
銀行であれ証券会社であれ、もっと言えばどんな会員制度でも、口座などの会員登録を維持するにはコストがかかります。そのコストを会員に負担してもらうのは、当たり前のこと。この当たり前の口座維持手数料が廃止されることは、銀行の新しいビジネスモデルが消滅することでもあります。そう考えると、ジャパンネット銀行の口座維持手数料廃止は、それほど喜ばしいことではありません。
☆ 今日のまとめ☆
ジャパンネット銀行が口座維持手数料を廃止したのは、消費者に受け入れられなかったから。
他の銀行では無料で銀行口座を持て、さらに預金によってお金を増やしたいのに、なぜわざわざお金を払うのはおかしい、と消費者が感じたのだろう。
しかし、コストコなど、従来無料のものに会費を設定して、成功している企業もある。
口座維持手数料以上のベネフィットを提供できれば、ジャパンネット銀行も廃止せずに済んだのではないか。
銀行の新しいビジネスモデルだっただけに、ジャパンネット銀行の政策変更は、それほど喜ばしいものではない。
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☆ 今日のこぼれ話☆
ジャパンネット銀行に口座を持っているのですが、ほとんど利用していません。
コスト面を重視する私にとって、メリットが少ないからです。
ジャパンネット銀行の一番の特徴は、セキュリティが他のネット銀行よりも優れていること。
ワンタイムパスワードがあるためです。
ここをもっとアピールすれば、セキュリティに不安を感じる高齢者などにウケるのではないでしょうか。
☆昨日の目標→その結果☆
◎朝6時に起きる→◯
◎毎日情報を発信する→☓
◎毎日仕事以外の人に話掛ける→◯
◎腕立て・腹筋30回→◯
◎自宅のある12階まで歩いて登る、または自転車を30分以上漕ぐ→◯
◎部屋や家の掃除をする→☓
◎営業日誌を付ける→☓