和食ファミリーレストラン・坂東太郎のビジネスモデルは、まさにストーリーとしての競争戦略

ばんどう太郎の味噌煮込みうどん

by courtesy of toyohara

 

日経トップリーダー11月号に、和食ファミリーレストラン「ばんどう太郎」を運営する坂東太郎が取り上げられていました。その記事では、坂東太郎のビジネスモデルについて説明されていました。まとめると、次のようになります。

 

【坂東太郎のビジネスモデル】

[ターゲット]シニア層

[差別化要素]居心地の良さ

[差別化のための工夫]異動のない女将さんを配置

 

もともとマネージメント雑誌ということもありますが、記事の中でばんどう太郎の料理について述べられたのは、小さな写真とその説明のみ。料理以外の点で、競合他社と差別化していることがわかります。ターゲットであるシニア層に、居心地の良い接客・店内雰囲気を提供することで、圧倒的な支持を得ているようです。その結果、支持するシニア層が、子供や孫を連れて来店するようになり、客数が増加するというシナリオです。

 

多くの飲食店は、QSC(料理の品質・サービス・清潔さ)のうち、ついつい料理の品質を重視し、料理で差別化してしまう傾向があります。ただ、料理で差別化すると、コンビニ等の総菜や加工食品とのガチンコ勝負に発展し、最終的にはコスパ勝負に陥ります。コスパ勝負では、規模の経済が働く大手企業が圧倒的に有利になります。ここに利便性という対決軸が加わると、店舗数が多く気軽に入れるコンビニが有利になります。

 

一方、坂東太郎が差別化要素として採用したのは、居心地の良さ。その際たるものは、接客です。接客には規模の経済が働かないため、大手企業が有利ということになりません。だからこそ、地方企業の坂東太郎は、70店舗まで成長できたのでしょう。

 

さらに、接客を重視するなら、接客を重視してくれる相手にしなければ、大きな効果が得られません。そこで、坂東太郎は、接客を含むコミュニケーションへのニーズが高いシニア層をターゲットにしたのです。日経トップリーダーの記事によると、

 

65歳以上の一人暮らしの人のうち、他人と会話する機会が「2週間に1回以下」という男性は16.7%

 

とのこと。それだけコミュニケーションに植えているシニア層は多いのです。だから坂東太郎は、差別化要素が一番効果を発揮するシニア層をターゲットにしたのでしょう。

 

しかし、居心地の良さを提供することは、競合他社でもできること。そこで、競合他社ができないことにより、居心地の良さで勝る必要があります。そこで坂東太郎が採用したのが、異動のない女将さんの配置。異動がないパート従業員に任せることにより、顧客とより深く長い関係を築くことができ、これが居心地の良さにつながります。パート従業員に、店舗の顔とも言える女将さんを任せることは、なかなかできません。恐らく、パート従業員を女将さんにまで育成させる何かしらの仕組みが、坂東太郎にはあるのでしょう。

 

このビジネスモデルは、単にシニア層への売上拡大をもたらすだけに留まりません。居心地の良い職場は、従業員のモチベーションの向上や離職率の低下を導き、労務コストの削減をもたらしているのです。ストーリーとしても競争戦略のお手本のようです。

 

☆今日のまとめ☆

坂東太郎は、居心地の良さで差別化する効果を高めるために、シニア層をターゲットにしている。

また、居心地の良さを競合が真似できないように、パート従業員を女将さんとして配置。

その結果、売上拡大のみならず、従業員のモチベーションアップ・離職率の低下を導き、労務コストの削減に成功している。

坂東太郎のビジネスモデルは、まさに、ストーリーとしての競争戦略と言えるだろう。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

記事を読んで、ばんどう太郎に行きたくなりました。

こうやってファンを作るのかぁ。

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