ユニクロの販売失速要因は、値上げだけか?

ユニクロのショッピングバッグ

ユニクロの業績が芳しくないようです。

ファーストリテイリングがカジュアル衣料品店「ユニクロ」の国内事業で苦戦している。7日発表した2015年9~11月期の連結決算(国際会計基準)は純利益が前年同期比30%減の480億円となり、9~11月期としては5年ぶりの減益だった(2016年1月8日付 日経新聞朝刊)

店舗ビジネスの場合、既存店売上の前年同期比の増減には、否が応でも注目が行きます。アパレル各社が苦戦していた中でも、ユニクロは既存店売上がプラスに推移していました。値上げして客数が少々減っても、客単価の増加により既存店売上はプラスを維持できていました。しかし、その歯車が狂ったようです。客数の減少率がひどく、客単価の増加では補えなくなり、既存店売上がマイナスに転落しました。

日経新聞などでは、値上げにより客離れが起こったと評論していますが、それも事実。実際、買い物客として来店した時、高いと感じますから。価格には厳しい(いわゆる価格弾力性の高い)私ということもありますが、割安感がウリだった(!)ユニクロの顧客の多くは、そもそも価格弾力性がそれなりに高いのでしょう。だから、値上げすれば、客数がそれなりに減るのは仕方ないこと。これまでの値上げでさほど客数が減らなかったのは、値上げしても競合他社よりも安かったからでしょうか。競合とさほど変わらなくなれば、ユニクロは価格以外の要素で選ばれる立場になります。そう考えれば、ユニクロ商品のコスパ(コストパフォーマンス)が落ちたとも言えます。

しかし、ユニクロ店舗来店時には、価格以外のイケていない点も発見しました。小売業に関わらず、ビジネスに携わる人にとっては、反面教師にもなることでしょう。

【価格以外のユニクロのイケてない点】
1. よく似た商品が多くあり、どれを買ったらいいかわからない
2. 値下げ表示を値札ではなくPOPで行っているので、実際の値段がわかりにくい
3. 届かない所に商品がある割に、店員が少なく困る
4. 同じ商品が複数に陳列してあり、買い物しづらい

1について、これはヒートテック機能を付加した商品を投入したこともあり、見た目にはほとんど同じでも、商品名・価格の異なる商品が増えたという印象を持ちました。その結果、用途別に買うべき商品がわからないという事態が生じるわけです。購入意欲の高い商品ならば、買うか買わないかの結論に至りやすいですが、衝動買いの商品は、どれを選んだらいいかわからなくなり、結局やめとこ、ということになり兼ねません。知らない間に、販売機会を損失しているわけです。

ヒートテック関連商品が増えたのは、値上げするに伴い機能強化が必要だったのかもしれません。値上げを成功させるには、付加価値を高めるしかないという、ファストリテイリングの思想を感じざるを得ません。しかし、その結果似たような商品アイテムが増えれば、選びやすさという価値を毀損してしまいます。

2について、ユニクロは値札に値下げシールを貼ることは、滅多にありません。(恐らく処分品のみ)値下げをする場合は、商品のある棚に赤地に白で大きく書かれた価格のPOPが立っています。1つの棚に同種類の商品だけが陳列されていれば問題ないのですが、複数種類の商品が並んでいたら、どれが値下げされているのかがわかりません。店員に聞けば済む話かもしれませんが、そういう時に限って近くにいない。これも機会損失ですね。

商品アイテムが相当増えた結果でしょうか。POPによる表示は、低コストの値下げ表示ですが、種類が増えれば混乱を招くことになり兼ねません。店員への質問が増えれば、逆にコスト増加となります。

3について、これは比較的身長の低い私に限ったことかもしれません。少し高い棚ならば、背伸びすれば済みますが、高い所にカゴで陳列されているものを取る場合は、背の高い人に頼むしかありません。来店客にとっては、買い物しづらい店舗でしかありません。

高い場所に商品を陳列するには、それだけ商品アイテムが増えたからに他なりません。ここでも、商品アイテムが増えた弊害が出ているのです。

4について、同じ商品が複数箇所に陳列してあると、在庫を確認するのに店内を回遊しなければなりません。売る側からすれば、店舗滞在時間が長くなるので、買い物点数が増える確率が高まるという利点があります。しかし、来店客にとっては、時間が掛かるというデメリットが生じます。複数箇所に陳列するのは、それだけ売りたい商品だからでしょう。ならば、両方の売場でそれなりの品揃えが必要になります。

以前は複数陳列でも、ボリューム感のある売場でした。それが無くなったのも、販売アイテム数が増えて、1つのアイテムの売場を縮小せざるを得なくなったからではないでしょうか。

すべてに共通するのは、

多様化する消費者ニーズに合わせるために、商品アイテム数が増加したから

ということ。元々ベーシックカジュアル専門の店でありながら、似た商品が増えることでベーシックでなくなったことに、顧客がそっぽを向いた。これが、値上げ以外の客離れの要因に思えてなりません。

結局言えることは、違いのわかりにくいよく似た商品をいくら豊富に並べても、それは自己満足でしかないということ。同じことは、GMSにも当てはまるでしょうか。単に並べれば売れる時代はもう終わり。ユニクロは、並べるだけではなく、商品説明も大きめのPOPで表示していますが、それでも違いがわかりにくい。品揃えは豊富さよりもわかりやすさの方が、売りに繋がるのではないでしょうか。

今現在のユニクロ店舗に入ると、売れ残ったダウン商品が所狭しと並んでいます。値上げもありますが、暖冬の悪影響を一番でしょう。値段も頃よくなっており、サイズ・シルエットさえあれば、買ってもいいなとも思いますが、これまたよく似た商品のオンパレードで違いを理解するだけでもうんざりするほど。結局買わず仕舞です。

こういう体験が何度もあると、ユニクロ(特に週末の特売時に)を訪問する習慣さえなくなった元顧客が増えていても不思議ではありません。

☆今日のまとめ☆
国内ユニクロの販売失速は、値上げだけではなく商品アイテムが増えすぎて、選びにくくなったからではないか。

☆ 今日のこぼれ話☆
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
書きたいネタは随分あるのですが、一度ブログを更新する習慣が無くなると、本当に書かなくなりますね。
怖い、怖い。
さて、ユニクロの店舗デザインや企業の思想は、個人的に好きで応援したいのですが、最近随分買うもの・買いたいものが減ったと感じます。
既に持っているものも多いのですが、一番の理由はサイズ・シルエットでしょうか。
ベーシックカジュアルに、シルエットを求めるのはどうかと思いますが、ちょっと自分のテイストには合いません。
ならば、トレンドを追いかけるGUに行けばいいのかもしれませんが、GUは安いなりの品質なので、買いたい商品はほとんどありませんね。(下着ぐらいでしょうか)
サイズにしても、GAPがXXSまで広げる一方で、ユニクロはいまだSからの展開。
XSを作らないのは、製造コスト・売れ残りコストを考えてのことでしょう。
意外にサイズ展開を増やせば、値上げしても顧客が戻ってくるかもしれませんね。
そう言えば、先日店舗でセットアップスーツを見つけました。
SMLというサイズ展開でしたが、どの程度売れるのか興味ありますね。

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