ワタミの深夜営業縮小から考えた、居酒屋営業の変化予測
先日の日経新聞に、次のような興味深い記事が掲載されていました。
ワタミは今夏をめどに居酒屋「和民」などの約1割の店舗で深夜営業を廃止する。朝型の生活に切り替える人が増えたことなどから深夜の集客力が低下しているうえ、パート・アルバイトの人件費が上がっているためだ。採算面などの影響を見極めたうえで、対象店舗の拡大も検討する。(2013年5月20日付 日経新聞朝刊)
ワタミが深夜営業を縮小する理由は、以下のようにまとめることができます。
【ワタミが深夜営業を縮小する理由】
[1] 深夜売上の減少
[2] アルバイト人件費の上昇
1について、これは消費者ニーズの変化によるもの。つまり、消費者が夜に遊ばなくなったからに他なりません。その背景には、所得の減少もあるし、アルコールを飲まなくなったこともあるかと思います。一方で、生活を朝型にする人が増えているようです。生活スタイルが夜型から朝型にシフトしたことが、深夜営業の居酒屋に影響を与えていることがわかります。
2について、これは人口減少が一番大きな要因。特に、居酒屋のアルバイトは、大学生やフリーターなど若者が中心であるので、その若者の数が減少していることは居酒屋の採用に大きくマイナスに働きます。人が欲しいけど集まらない。だから、時給を少しでも引き上げて、競合する飲食店やコンビニよりも魅力的な募集内容にするのです。この引き上げ分が、居酒屋の収益に大きくマイナスに働くことになります。特に、ワタミのように割安感をウリにする居酒屋の場合、人件費増を価格に転嫁することは容易ではありません。だから、時給に割増賃金が発生する深夜営業を縮小するのです。
このワタミの動きは、他の居酒屋チェーンにも波及するはず。そこで、上記理由により深夜営業を縮小せざるを得なくなった居酒屋が、今後どのような営業スタイルを取るのかについて、予測してみました。
【今後の居酒屋営業スタイル予測】
[1] 深夜サービス料金の設定
[2] 朝食・昼食の提供
[3] サービス重視型への転換と定休日を設定
1について、深夜の人件費が上昇しているなら、その分を価格に転嫁すればいいという方法です。深夜割増料金は、タクシーでは一般的な価格設定です。また、カラオケでは、時間帯によって料金が変更されます。だから、居酒屋が深夜料金を設定しても、不思議ではありません。この場合、サービス料として、会計に対するパーセンテージを設定する方法が、わかりやすいかと思います。例えば、深夜10時以降来店のお客様の会計については、サービス料として別途10%掛かるというやり方です。
2について、生活スタイルを夜型から朝型に変える人が増えてきたなら、朝型生活の人に料理やサービスを提供すればいいという、考え方です。具体的には、朝食や昼食を提供するということ。この場合、コンビニやファストフードとモロに競合するので、独自性が必要とされます。最近の事例で言えば、朝食メニューの拡充に動くモスバーガーが、このやり方を採用しています。
3について、定休日を設定することで労働環境が改善され、人材が集まりやすくなる効果があります。また、労働環境の改善により、サービス提供側に余裕が生まれるので、サービスの向上というメリットも生まれます。一方、定休日を設定すれば、定休日分だけ売上が減少するという大きなデメリットが生じます。このデメリットをサービス向上というメリットで賄うには、サービス分だけ価格に転嫁する必要があります。割安感で売上を稼ぐチェーン居酒屋では、価格転嫁が難しいので、この方法は大変難しいでしょう。だから、個人店舗向きの方法と言えます。言うまでもなく、この方法を取るには、料理・サービスとも、その品質を向上させなければなりません。最近の事例で言えば、百貨店の三越伊勢丹がこのやり方を採用しています。
朝方まで居酒屋で飲み明かしたことや、深夜まで居酒屋でサービスを提供したことのある私にとっては、居酒屋の深夜営業縮小は少し信じられないことでもあります。しかし、これも消費者ニーズ・人口静態の変化によるもの。外部環境に対応できなければ生き残れない、ということを改めて実感しました。
☆今日のまとめ☆
ワタミが居酒屋の深夜営業を縮小するのは、深夜売上の減少と人件費の上昇に直面しているからである。
この背景には、朝型へのシフトという消費者ニーズの変化と若者人口の減少という外部環境の変化が存在する。
この環境変化により、居酒屋営業は大きく変化するのではないか。
例えば、深夜サービス料金の設定や朝食・昼食の提供、サービス重視への転換と定休日の設定などである。
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☆ 今日のこぼれ話☆
そう言えば、個人的にも夜遅くまで飲み歩くことは、めっきり減りました。
こういう人が増えたからこそ、居酒屋・バーの売上が減ったのですね。
☆ 最近買った商品☆
先日、飲んだのがこちらのビール。
中身の写真を撮るのを忘れていました。
それだけ、美味しかったということ。
ドイツのヴァイツェンなのですが、やはり本場の白ビールはうまいですね。
値段も手頃だったんで、リピートすると思います。