キッコーマンの生鮮野菜参入から考えた、野菜という商材の特徴

キッコーマンのTシャツ

 

キッコーマンが生鮮野菜市場に参入するようです。

キッコーマンは生鮮野菜の生産・販売に参入する。加工食品に取り入れている米有力ブランド「デルモン テ」を使い、自社開発した高価格品を販売する。第1弾として9月からトマトを売り出す。主力のしょうゆ事業が伸び悩むなか、米社のブランドと販路を活用 し、消費者の健康志向で伸びる生鮮野菜需要を取り込む。

(2014年8月26日付 日経新聞朝刊)

 

参入理由は、需要が拡大するからです。具体的には、一世帯あたりの支出金額が増加傾向にあるからです。総務省の家計調査によると、二人以上の一世帯あたりの生鮮野菜への支出金額は、2002年以来で最高になったようです。記事にはグラフも掲載されているのですが、そのグラフを見れば一目瞭然。ただし、このグラフ、縦軸の0~5100円までは省略されているので、正確にグラフ化すると、さほど変化していないと解釈した方がいいかと思います。ただ、二年連続増加しており、2002年以来最高なので、微増しているのが事実でしょうか。

 

また、世帯あたりの金額というのも、注意が必要。この数字は、人口・世帯の増減に影響を受けません。生鮮野菜市場自体は、恐らく人口減の影響を食らって、減少しているのではないでしょうか。

 

それはともかく、一世帯あたりの支払金額が増えているのは事実なので、その要因について、考えてみたいと思います。

 

【世帯あたりの生鮮野菜への支出が増えている要因】

[1]外食から内食へシフトしているから

[2]総菜調味料・調理家電の普及で、野菜を使った簡単調理ができるようになったから

[3]ネット・リアルともレシピ増加で調理ハードルが下がったから

[4]高齢化で購入数量は減るも、単価が上昇しているから

[5]ヘルシー志向の人が増えたから

 

1は、デフレ経済時に起きた外食から内食へのシフトが、そのまま継続している可能性があります。また、高齢化により、飲食店よりも自宅で食べたい人が増えていることも考えられます。外食産業で起きている客数の減少は、人口減以外にも内食へシフトも影響していることでしょう。

 

2は、キッコーマン自体も販売している総菜調味料市場が拡大傾向にあるようです。実際、スーパーの売り場でも売り場面積は増えているように感じます。また、調理家電も、以前に比べればかなり増加。家電量販店の調理家電売り場に行ったことありますか。週末ともなると、かなりの賑わいです。

 

3は、クックパッドがかなり貢献していると思います。実際、私も自宅で調理する際、「食材、レシピ」と検索すれば、クックパッドで大量のレシピを発見することができます。大抵の食材で、簡単にレシピがわかります。知らない野菜を買うリスクは、相当下がったと言えるでしょう。また、新聞や雑誌・フリーペーパーでも、レシピは増えたように実感します。レシピを見て料理をするきっかけを掴めば、野菜の購入につながるのです。

 

4が一番重要。高齢化により恐らく食べる量は減っているでしょう。なのに、世帯あたりの支出金額が伸びているということは、単価の高い野菜が売れているのではないでしょうか。だから、キッコーマンは後発ながら参入を決定したのだと思います。つまり、高品質(美味しさや栄養価)が売れる市場ならば、後発にありがちな値下げによる販促を避けることができ、利益率が低下する危険性は低いのです。上場企業であるキッコーマンなら、当然利益率を意識しているはず。たとえ黒字でも、利益率の悪い周辺事業は、売却するのがグローバル企業の傾向です。キッコーマンは、国内の加工食品のような価格競争に陥らないと判断したからこそ、生鮮野菜市場への参入を決めたのだと思います。

 

5については、高齢化も関係していますが、若い人にもヘルシー志向は高まっています。これは、先進国共通のトレンドのようです。実際、マクドナルドはアメリカ市場でも苦戦しているのですが、その要因は、若年層がマクドナルドからよりヘルシーで美味しいファストカジュアルにシフトしているからだそうです。ヘルシー志向が高まれば、生鮮野菜の購入動機も高まります。

 

このように、キッコーマンの生鮮野菜市場への参入からわかるのは、高くても高品質ならば売れるという野菜の特徴。野菜は、うまく売れば価格競争に巻き込まれにくい商材なのです。

 

そう言えば、日経電子版の記事に、売れる野菜価格の秘密に関する記事がありましたね。あれ、とても勉強になりますよ。

 

☆今日のまとめ☆

野菜は、高品質ならば高くても売れる商材。

よって、加工食品のように価格競争にも陥りにくい。

だからこそ、利益率を落としたくないキッコーマンは参入を決めたのではないか。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

そうは言うものの、安い野菜は本当に売れます。

JR大阪駅のエキマルシェの野菜売り場は、低価格でかなり賑わっていますよ。

エキマルシェの物販部門では、一番の集客数ではないかなぁ。

安さで集客して、より美味しい野菜を売り込む。

そう考えれば、野菜こそ試食販売が適している商材とも言えますね。

 

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