有料会員という商法の強みと弱み
有料で会員になった人だけが特典を得られる制度、というのがあります。コストコは、その際たるものです。コストコの一番の特徴は、有料会員しか買物できないこと。(例外的に、コストコ本の付録などで入場券を配ってますが、それを使った場合は5%割増で支払う必要があります)この制度のためか、コストコは本場アメリカでも業績を伸ばしています。物販売上・会費収入とも伸ばしています。
このコストコの会員制に目を付けたのが、米百貨店のメーシーズ。25ドル事前に支払えば、9月から年末までの買物総額の10%をクーポンで割り戻すという企画を実施しています。これは、ブラックフライデーから始まる年末商戦の前倒しであり、25ドルを最初に支払ってもらうことで、競合店ではなくメーシーズで買物をするように仕向けているのです。この企画の成否は、気になるところです。
メーシーズも採用した有料会員という商法ですが、そのメリットは、
顧客は元を取ろうとその小売店で優先的に買物をしてくれる
ということです。コストコに4000円近く支払えば、できるだけコストコで買物しようと思うもの。メーシーズもこの効果を狙って、異例とも言える有料型セールを行ったのです。
また、有料会員だけが得られる「特別感(exclusivity)」というのもの、メリットの一つ。実際、メーシーズの企画は、この特別感・優越感で買物意欲を高めようという目的で実施されているとか。(WSJ元記事)値下げによるロジックだけではなく、感覚によるマインドを駆使しないと、なかなか売れない証拠です。
ただし、デメリットももちろんあります。それは、
最初に支払うことが大きなハードルとなり利用を妨げる
ということです。コストコでの価格が他チェーンよりも低いことがわかっていても、4000円近く事前に払うことには抵抗があるもの。メーシーズの企画でも、事前に25ドルも支払うことは相当大きなハードルとなります。
日本には、このデメリットに敗れた事例があります。ドン・キホーテが2010年に始めた会員制百貨店・WRです。有料で会員になれば、百貨店で販売されるようなブランド品が3~4割安く買えるというウリでしたが、有料会員制というのがネックになったみたいです。
よくよく考えて見れば、ポイントカードも事前に支払う制度と考えることができます。元々の値引き相当分をポイント付与することによって、購入者は値引き分を余分に支払うことになります。ただし、この場合は単に支払うだけではなく、支払と同時に商品を手に入れることができます。ここが有料会員制度との大きな違い。
カード型の電子マネーの場合はどうでしょうか。カード型の電子マネーは、有料で販売されています。300円ほどで購入し、自分でチャージして使います。この300円は、カード代です。(カード不要のモバイル版は無料で電子マネーに参加できます。)電子マネーを使う一番のメリットは、ポイント付与により割安に買物ができるから。このメリットが明確だからこそ、300円を支払って電子マネーカードで決済するのです。
そう考えると、予め得られるメリットがわかっていれば、有料会員制度は十分受け入れられるかもしれません。ドン・キホーテの失敗要因は、有料会員というよりも、その品揃えが客層のニーズとマッチしていなかったのかもしれません。
いずれにせよ、単に「値下げする」「品揃え」を増やすだけでは、消費が従来ほど喚起されないのは事実です。
☆今日のまとめ☆
事前に会費を支払う会員制度のメリットは、顧客を囲い込みできるとともに、顧客に会員という特別感・優越感を感じてもらうことで消費を喚起するということである。
逆に、デメリットは、入会のハードルが高いこと。
有料会員が採用されるのは、単なる値下げや品揃え強化だけでは売れないことの証拠だろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
先日、心斎橋商店街に行った際、その界隈で使える11000分の商品券が10000円で販売されていました。
調べてみると、2012年から行われている販促企画。
こういうきっかけがないと、ネットに流れるということでしょうか。