【535号】米ニューハンプシャー州で製紙工場が再稼働した理由とは?

ティッシュBy JuditK

 

◎本日のニュース

1)見出し
Tissue Rolls to Mill’s Rescue
【出典】
http://goo.gl/KYRXP

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2)要約
ニューハンプシャー州・ゴーハム市で、製紙産業が復活している。
ニューハンプシャー州の製紙産業は、

100年以上の歴史があるものの、
デジタル化の煽りを受けて、2010年に最後の工場が閉鎖し
たばかりであった。製紙産業が復活した理由は、トイレットペーパーや
ティッシュペーパーの需要が着実に伸びているからである。
その要因は、世界的な人口増加と新興国の生活水準の向上である。
また、トイレットペーパーなどは、その容積の大きさにより、
海外から船で運ぶとコストが合わない。
よって、アメリカ国内での生産が増えることになる。

これに目を付けたファンドが、ニューハンプシャー州の
閉鎖した製紙工場を買収し、再投資を予定している。
この結果、雇用が生まれ、人口減少により寂れていた町の
活性化が期待される。一方で、トイレットペーパーなどを
製造する工場が、全米に増えていることにより、
供給過剰・競争激化を懸念する声もある。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
The rebirth, and optimism at other paper mills nationwide,
is due to one of the few bright spots in the industry:
steadily rising demand for toilet and tissue paper
that goes with global population growth and
rising standards of living in emerging markets.

4)キーとなる英文の和訳
全国にある他の製紙工場で再生や楽観主義が生まれるのは、
製紙産業に将来有望なチャンスが少しあるからである。
それは、トイレットペーパーとティッシュペーパーに
対する需要が着実に伸びていることである。
この需要増加の要因は、世界的な人口増加と
新興国での生活水準の向上である。

5)気になる単語・表現
mill    名詞      (原材料加工関連の)工場;水車場

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
紙と言えば、なかなか差別化がしにくく、価格競争に陥りやすい。
店頭で販売されるコピー用紙を見れば、よくわかる。
さらに、パソコン・タブレット端末などの普及で、
デジタル化が進めば、紙自体の需要は減っている。
斜陽産業と言っても、過言ではない。実際、
製紙産業が有名なニューハンプシャー州では、
製紙工場が激減していた。

その製紙産業が、先進国のアメリカで復活しているという。
価格競争に陥りやすい商材ゆえに、どちらかというと、
製造は先進国から新興国・発展途上国に移ってもおかしくない。

アメリカで製紙産業が復活した原因は、
1.需要に応じて、製品を変化させたから。
2.製品の特徴ゆえ、国内製造が向いているから。
である。

1には、需要の変化が影響している。その変化とは、
◯ノート用・印刷用→激減
◯トイレ用・ティッシュ用→増加
である。ノート用・印刷用が激減した要因は、
前出のデジタル化。コピー用紙・ノート・新聞紙の
消費量が激減している。

一方、トイレ用・ティッシュ用が増加しているのは、
世界的な人口増加と新興国での生活水準の向上による。
これだけなら、賃金のより低い新興国や発展途上国で、
トイレ用・ティッシュ用の紙を製造し、
世界に輸出すればよい。しかし、紙だけにそうは行かない。
ここで2の原因が関係する。

紙、特にトイレットペーパーやティッシュペーパーは、
重量の割に容量が大きく、かさばる。しかも、単価は低い。
よって、船で運んだとしても、ユニットあたりの運賃は
意外にも高くつく。それゆえ、消費地に近い場所で製造した方がいい。
だから、アメリカで消費されるトイレットペーパーや
ティッシュペーパーは、アメリカで生産されることになる。

一つしっくり来ないのは、アメリカで生産したトイレ用・
ティッシュ用紙が、需要の高まる世界各国に輸出されることは、
輸出に向かない商材であることと矛盾するのではないか、
ということである。この点について、記事では説明されていない。
よって、ここからは私の推測であるが、
◯アメリカの人口(移民)増加→アメリカでの需要の増加
◯新興国での高品質なトイレットペーパー・ティッシュペーパー
の需要増→品質の高いアメリカ製品の需要増
により、アメリカでの生産が増加しているのではないだろうか。
高品質な商品ならば、一般商品よりも単価が高いため、
運賃が少々余分に掛かっても問題ない。日本のコストコで、
割高なアメリカ製トイレットペーパーを購入する消費者を
よく目にするので、新興国で同じ事が起きていてもおかしくない。

この事例からわかることは、
労働コストの高い先進国で、コモディティ化しやすい製品の
製造業が生き延びるための条件
である。その条件とは、
1.容量が大きいなど、単品当たりの輸送コストの高い。
2.需要に大きな変動がない。
3.高い付加価値を付ける。
である。1・2は、この記事から導き出したもの。
1の条件により、海外の低価格商品の流入を防ぐことができる。

2について、需要に大きな変動があれば、設備投資に及び腰になる。
その結果、設備よりも人件費の方が安くつく新興国・
発展途上国へ投資しても、おかしくない。よって、
労働生産性を高める設備投資を行うには、
需要に大きな変動がないことが必要になる。

3は、アメリカで復活した製紙産業の反面教師である。
トイレ用・ティッシュ用の製紙需要が増えたために、
アメリカで製紙工場が増加。その結果、供給過剰・
競争激化が懸念されている。このような結果を招いたのは、
製品に大きな差別化がなされず、付加価値が低いからである。
高い付加価値を付けて差別化するには、マーケティング力
(利用者が求めているものは何か?)・技術力
(それを製品にするためにはどんな技術が必要か?)が必要になる。
マーケティング力・技術力がさらに磨かれると、
差別化だけにとどまらず、新しい用途ができる製品の開発につながる。

コモディティ化しやすい製品を作る製造業は、
人件費の低い海外生産に目が向かいがちである。
しかし、上記条件を揃えることにより、国内製造でも
十分売れる製品を製造することは可能である。

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《今回のヒントのまとめ》
1)アメリカでは、コモディティ化しかねないトイレ用・
ティッシュ用紙製品の生産が増え、製紙産業が復活している。

2)その要因は、「容量が大きいために、
単価あたりの輸送コストが高いため」と、
「需要に大きな変動がないため」である。

3)輸送コストが高くつくことにより、
海外からの安い商品の流入を防ぐことができる。
また、需要に大きな変動がないために、
高くつく国内での設備投資を行うことができる。

4)ただ、コモディティ化しやすい製品を先進国で製造するためには、
「付加価値を高める」というもう一つの条件が、必要になる。
マーケティング力・技術力を高めることにより、
付加価値を高めることができる。

5)これら3つの条件を揃えることにより、
コモディティ化しやすい産業でも、国内で売れる製品を
製造することは可能になる。
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編集後記
コストコで販売されているアメリカのトイレットペーパーは、
一つ一つラッピングされています。
さらに、輸送コストが高くつくので、価格が高いのでしょう。
あのトイレットペーパーだけは、まだ手にしたことはありません。
私にとっては、日本製で十分ですね。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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