【563号】チェコの旅客鉄道市場とLCCの関係とは?

リジオジェットBy carnero.cc

 

◎本日のニュース

1)見出し
Czech Trains Tempt Travelers Off Roads
【出典】
http://goo.gl/t86aX

 

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2)要約
チェコ共和国の旅客鉄道市場に新規参入する民間企業が現れ、
旅客鉄道市場全体が活性化している。これまでは、
公営企業により独占されていた。

新規参入したのは、リジオジェット。リジオジェットは、
過去20年間発展してきたチェコと、依然貧弱なままの
旅客鉄道のサービスレベルに満たされていないニーズを見出した。
そこで、中古の列車を改造し、心地の良い座席・行き届いた
サービスを提供する民間鉄道サービスを始めた。

公営鉄道よりも料金は高いにも関わらず、

リジオジェットの座席販売は、
売り切れが頻出するほど好調に推移している。この新規参入に対抗する形で、
公営鉄道も列車やサービスを刷新したので、旅客鉄道市場全体が
拡大するようになった。さらに、補助金を受けない民間企業の出現は、
旅客鉄道のイメージ向上にもつながっている。

その他にも、あと1社が今後サービスを提供するとしている。
これらの新規参入組は、サービス向上や選択肢の拡大により、
旅客鉄道市場の今後の拡大を見込んでいるが、
一方でその将来性に疑問を呈する声もある。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
A local entrepreneur is shaking up the Czech passenger rail industry,
winning fans with unprecedented levels of customer service and
potentially establishing a new business model in Central Europe.

4)キーとなる英文の和訳
地元の起業家が、チェコの旅客鉄道産業を揺るがしている。
それは、前例のない顧客サービスレベルでファンを獲得し、
中欧に新たなビジネスモデルを確立する可能性を秘めているからである。

5)気になる単語・表現
shake up他動詞句(会社など)を大規模に再編成させる
unprecedented形容詞先例のない
potentially副詞潜在的に

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
チョコ共和国の旅客鉄道市場が、民間企業の新規参入により拡大している。
新規参入したのは、リジオジェット(RegioJet)。
ラディム・ジャンキュラ氏によって1990年代に創業された企業で、
もともとは旅行代理店であった。その後、大都市間を結ぶ長距離バスサービスに参入。
しかし、消費者ニーズが高度化し、長距離バス市場に将来性がないと見て、
旅客鉄道市場に参入した。

旅客鉄道市場にビジネスチャンスを見出したのは、
以下のギャップに注目したからである。

チョコ共和国全体:過去20年発展し、西欧諸国並になった。
?
チェコの旅客鉄道サービス:公営鉄道による独占が続き、
サービスレベルは西欧諸国に比べて貧弱のままであった。

チェコの消費者は、国全体の発展とともに、
より品質の高い商品を求めるようになったが、
そのニーズに対して、公営鉄道が提供する旅客鉄道サービスが
追いついてなかった。リジオジェットは、
この消費者の不満にビジネスチャンスを見出した。

リジオジェットが提供した新しい旅客鉄道サービスは、

レザーシート
無料無線LANサービス
ノートパソコン用電源を提供
社内でリフレッシュできる商品の販売
車掌・販売員の笑顔のある心地よいサービス
無料の新聞提供

など。無料の新聞提供などは、少しやりすぎかと思うが、
ここまでのサービスを提供することで、公営鉄道による
従来のサービスとの違いを、強調できるのかもしれない。
一方で、公営鉄道は、1980年代に導入した列車の硬い座席など、
その列車・社内サービス・路線などのインフラも含めて、
利用者が満足いく商品を提供できていない。この違いにより、
リジオジェットの切符は公営鉄道よりも高いにも関わらず、
その乗車率は通常80~90%にも及び、売り切れを頻発している。

このリジオジェットの参入は、チェコの旅客鉄道市場全体にも
恩恵を及ぼすことにもなる。それは、

パイの拡大

である。チェコの旅客鉄道市場が拡大した理由は、以下の通り。

1.競争が起こることにより、公営鉄道の列車・サービスが改善されたから。
2.自動車・飛行機で移動していた人が、鉄道を利用するようになったから。
3.補助金を使わない民間企業の出現により、鉄道のイメージが向上したから。

1について。公営企業は、リジオジェットの参入により、
苦戦を強いられるようになったのだろう。実際、
ドイツ鉄道との共同サービスの事前入札で落選している。
そこで、列車の高速化・座席の改善など、鉄道サービスの刷新を行うようになった。
これにより、公営鉄道の顧客満足度が高まることになる。

2は、鉄道サービスが向上することにより、自動車や飛行機にはない
利便性が見直されたことを意味する。その利便性とは、

◯自動車との比較→渋滞がない
◯飛行機との比較→前もってチェックインする必要がない、
セキュリティチェックが必要ない、中心街から離れた空港に行く必要がない

など。快適に、乗りたい時に、中心街から出発できる鉄道の利便性を再認識したため、
自動車利用者や飛行機利用者が鉄道を利用するようになった。

3は、税金である補助金が使われる鉄道サービスに、
納税者はいいイメージを持っていなかったという。そこに、
補助金を必要としない民間企業が参入したのだから、
鉄道全体のイメージは向上し、鉄道を利用しようという気になる。

この新規参入による市場全体の拡大は、LCCの参入による市場の拡大と似ている。
LCCの参入により

◯メガキャリア(JALやANAなど)のサービスが向上する
◯バス・鉄道市場から顧客を奪い、航空市場全体のパイが拡大する

ということが起こる。そして、この裏には、

既存事業者が満たさなかった潜在顧客のニーズ

が存在する。潜在顧客のニーズとは、
チェコの旅客鉄道サービス→より快適に、好きな時に、
好きな場所から移動したい
LCC→より早く、より安く移動したい
である。この潜在顧客のニーズに気づいたからこそ、
新規参入が生まれただけでなく、市場全体のパイが拡大するようになった。

面白いことに、12月に旅客鉄道市場に参入するレオ・エキスプレス(Leo Express)は、
チェコの旅客鉄道市場がLCC参入前の航空市場に似ている点に、
注目しているという。具体的なサービス内容はわからないが、
旅客鉄道版LCCを目指しているのかもしれない。

RegioJet http://www.regiojet.cz/cs/
Leo Express http://le.cz/
Czech Railways  http://www.cd.cz/default.htm
※すべて英語版あり

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《今回のヒントのまとめ》
1)民間企業のリジオジェットが、チェコの旅客鉄道市場に
参入することによって、市場全体が拡大した。

2)これは、競争が起こることで、全体の商品レベルが上がったからであり、
また自動車・飛行機から顧客を奪ったからである。

3)この現象は、LCCの参入による航空市場の拡大と似ている。

4)そして、既存事業者が満たさなかった潜在顧客のニーズに気づいたからこそ
新規参入が起こるだけにとどまらず、市場全体のパイが拡大するようになった。

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編集後記
チェコの各企業のサイトを見て感じたことがあります。
それは、どのサイトも複数言語に対応しているということ。
単一言語の日本では、もちろん日本語対応だけでいいのですが、
今後海外市場の重要性が増してくると、複数言語が標準になるかもしれません。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!

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