食品スーパー・ヤオコーの既存店売上高がスゴイ本当の理由とは?

スーパーマーケットBy kitschkitten

 

※  「アメリカ経済事情」に関しては、サイト「ウォール・ストリート・ジャーナルから見た起業のヒント」にて更新しております。今後、ryotarotakao.comでは、メルマガには掲載しない内容を執筆する予定です。

 

10月27日の日経新聞朝刊に、食品スーパー・ヤオコーの業績記事が掲載されていました。(日経電子版申し込みはこちら

 

ヤオコーの2012年4~9月期連結営業利益は前年同期比1%増の62億円強となったもようだ。従来 予想は12%減の54億円だったが一転、4~9月期としては過去最高を更新する。低価格商品の拡充やポイントカードの導入で集客して販売が好調だった。利 益率の高いプライベートブランド(PB=自主企画)商品の販売も伸ばした。(2012年10月27日日経新聞電子版より)

 

そこで、ヤオコーの既存店売上高をサイト掲載の月次売上から調べてみました。こちらのグラフを見ると、ヤオコーの強さがわかるかと思います。

 

ヤオコーの既存店売上グラフ

 ※ヤオコーIR資料より

スーパーマーケット業界が集計した既存店売上高(2011年10月~2012年9月)は、2月以来すべて前年割れ。一方、ヤオコーは1月・3月・7月だけが前年割れで、残りの9ヶ月はすべて前年比プラスで終わっています。この秘密を知るために、

 

売上金額=客数X客単価

 

に因数分解して、考えてみました。ありがたいことに、ヤオコーの月次実績表には、客数・客単価が掲載されてあり、一品単価・買上点数まで公開されてありました。大雑把な水準・トレンドは以下の通りです。

 

【ヤオコー2012年4月~10月の既存店項目の水準・トレンド】

◯客数→すべて前年割れだが、回復傾向。

◯客単価→すべて前年比プラスで、ほぼ横ばい。

◯一品単価→ほぼ前年並で、ほぼ横ばい。

◯買上点数→すべての前年比プラスで、漸増傾向。

 

記事によると、ヤオコーも価格競争に巻き込まれているようで、低価格商品を拡充して集客を図っているようです。また約半数の店舗では、生活必需品を常時低価格で販売するEDLPを実施。実際に、ヤオコーのチラシを見ると、かなり値引きしていることがわかります。

 

また、ポイントが貯まる会員カードを今年1月に導入。ポイントを貯める動機を引き出し、買上点数が増加し、それが客単価の上昇に結びついているとのこと。買上点数の増加・客単価の上昇は、月次実績に数字として表れています。

 

これらを総合して、ヤオコーの既存店が好調な理由を推測しました。

 

【ヤオコーの既存店が営業好調な理由(推測)】

[1]会員カードの仕組みが、来店・購入を促しているから。

[2]低価格商品だけでなく、高単価商品も導入し、売れているから。

[3]PB商品にNB商品にはない懐かしさが漂っているから。

 

1について、会員カードをヤオコー公式サイトで調べると、通常小売店が発行するポイントカードとは異なる点に気付くかと思います。その点は、以下の通り。

 

【ヤオコーカードの特殊な点】

[4]発行手数料200円がかかること。

[5]ポイントは500ポイント=500円としてしか使えないこと。

[6]500ポイントは500円お買い物券に引き換えられ、有効期間は3ヶ月しかないこと。

[7]最後の買い物から1ヶ月以上経過すると、ポイントのみならずカードまで失効すること。

 

4については、お金を払ってまでカードを作ったということが、来店動機になります。有料会員にならないと買い物できないコストコの仕組みに、似ています。

 

5によって、カード会員の多くは、500ポイントを貯めることを目標に設定するかと思います。これは、そのまま来店動機になります。6も同じような効果があります。有効期限を設定することで、3ヶ月以内の来店がほぼ確定します。

 

7について、お金を払ってまでカードを作り、これまでポイントを貯めてきたことを考えると、1年以内に買い物する動機はかなり大きくなるかと思います。

 

これらをまとめると、次のようになるかと思います。

 

ヤオコーカードの効果=カード会員に大きな来店・購入動機を与える

 

2に関して、日経の記事によると、高単価商品を目立つ場所に並べているとのこと。さらに、チラシの裏を見ると、表とは異なり、単価の高い商品が多く掲載されてあるのに気づくかと思います。PB商品も、低価格品だけでなく、高単価の商品も投入されている模様。つまり、低価格を謳いつつも、さり気なく単価が高い商品も提案していることで、高単価商品の売上が伸びているのではないでしょうか。実際、単に単価が高いだけでなく、品質も単価同様高いようなので、高単価商品のリピーターは多いのかもしれません。

 

3は、サイトに掲載されてあるPB商品を見て感じた私見に過ぎません。NB商品やセブン・イオンなどの有名PB商品とは異なり、デザインがなんとなくレトロなのです。このレトロ感は、商品の優しいイメージにつながるのではないでしょうか。このレトロで優しいデザインの商品が、商圏の高齢者にウケているのかもしれません。実際調べたのではないですが、ヤオコー店舗の商圏が高齢者の多い地区ならば、このレトロデザインは、かなり戦略的だと言えます。

 

このように、ヤオコーの凄さを見て来ましたが、一品単価が前年並みに推移していることには、ポイントのカラクリもありそうです。(あくまで推測ですが)「食品スーパー最新情報」というブログによると、メーカータイアップによるポイント付与を行なっているようです。恐らく、コンビニで行われているような、「◯◯◯商品を購入すれば◯◯ポイント付与」というものかと思います。カード会員はなんせ500ポイントを貯めないと、会員になった意味がないわけですから、ポイント付与率を高めれば、その商品の売上は大きく伸びることになります。ここが重要なのですが、特別にポイント付与することにより、ヤオコーは単価を維持することができます。これが、一品単価の下落を抑えているのではないでしょうか。

 

ポイント付与率の拡大→一品単価下落の先送り

 

実際に、四半期ごとの貸借対照表を見ると、次のように推移しています。

 

【四半期ごとのポイント引当金の推移】

◯2011年9月30日 0円

◯2011年12月31日 0円

◯2012年3月31日 326,000,000円

◯2012年6月30日 407,000,000円

◯2012年9月30日 397,000,000円

ヤオコ-IRライブラリーより

 

ただし、ポイント引当金は4億円ほどで頭打ちになっていることを考えると、貯まったポイントは順調に利用されているとも読めます。今後、ポイント引当金が増加トレンドに戻るようなことがあると、一品単価の下落分がポイント引当金として先送りされている可能性があります。

 

☆今日のまとめ☆

ヤオコー既存店の強さは、来店・購入を促す会員カードの仕組みや、高単価商品の販売が要因ではないか。

ただし、ポイント付与率を高めることにより、一品単価の下落を先送りしている可能性もある。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

実は、会社員時代、ヤオコーさんを少しだけ担当したことがありました。

その時の印象は、紳士的で真面目。

だから、ヤオコーさんの好業績の記事を見ると、嬉しくなります。

 

 

☆アニキ金本知憲の言葉☆

「『あいつがやるならおれも』というふうに、全員が刺激しあうことで、戦うチームになるのだ。」(『覚悟のすすめ』より)

※『覚悟のすすめ』は、自分に弱い気持ちが出てきた時に、大きな力を与えてくれる本です。努力して結果を残した金本だからこそ、その言葉には重みがあります。

 

 

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