大手食品メーカー味の素の株価が高騰する本当の理由とは?
※ 「アメリカ経済事情」に関しては、サイト「ウォール・ストリート・ジャーナルから見た起業のヒント」にて更新しております。今後、ryotarotakao.comでは、メルマガには掲載しない内容を執筆する予定です。
10月13日の日経新聞朝刊に、味の素が取り上げられていました。マーケット担当記者から見た、味の素という企業に関する記事です。(日経電子版申し込みはこちら)
穀物相場の高騰が、味の素の飼料用アミノ酸事業に思わぬ追い風となっている。米国の干ばつの影響など で大豆価格が史上最高値圏にあり、飼料原料の大豆かすも急上昇。飼料原料として割安なトウモロコシに需要がシフトすると、栄養成分を補う必要があるためア ミノ酸需要が増える可能性があり、株価も底堅い動きをみせている。(2012年10月13日日経新聞朝刊より)
この記事は、消費者が普段接している、所謂「味の素」がメインテーマではありません。味の素のBtoBビジネス(対法人のビジネス)が取り上げられています。簡単にまとめると次のようになります。
【味の素の有望なBtoBビジネス】
[商材]飼料用アミノ酸のリジン
[好調な理由]高騰する穀物の代替品として使われるから
正確には、高騰する大豆の代替品ではなく、大豆の代替品として使われるとうもろこしを、大豆と同じ栄養成分にするために、リジンが使われるとのことです。
味の素のビジネスというと、まず思いつくのが、「家庭用食品の国内販売」です。これは、人口(とくに食欲旺盛な生産年齢人口)の減少によって、市場自体が縮小傾向です。(正確には、外食から市場を奪っていることもあり、内食市場は微増と捉えることもできる。)そして、次は「家庭用食品の新興国販売」です。これは、新興国での中間層の増加に伴い、伸び盛り。新興国でおむつを売るユニ・チャームの加工食品版です。この新興国ビジネスに、味の素の将来性を感じていました。
しかし、本当に有望なビジネスは、この飼料用アミノ酸の販売のようです。日経新聞の記事によると、
飼料用アミノ酸で全体の営業利益の1割強を稼ぎ出す
とのこと。そこで、実際に味の素のIR資料を見て、確認してみました。2012年3月期の実績を見ると、次のようになります。
【2012年3月期の味の素全体と飼料用アミノ酸の営業利益】
○ 味の素全体 726億円
○ 飼料用アミノ酸 113億円→営業利益全体の約15.6%
○ 国内食品(家庭用)317億円→同約73.7%
15%強も稼いでいることになります。国内家庭用食品に比べて、その割合はまだ小さいですが、営業利益率を比べると、次のようになります。
【2012年3月期の国内食品と飼料用アミノ酸の営業利益率】
○ 国内食品 7.2%
○ 飼料用アミノ酸 13.1%
飼料用アミノ酸がいかに儲かるかがわかるかと思います。ちなみに、全部門の中で、飼料用アミノ酸が営業利益率トップ。穀物相場にも影響されますが、世界の人口が増加し、肉食が増えることを考えると、飼料用アミノ酸ビジネスの潜在成長力は、相当高いのではないでしょうか。この成長力に反応して、味の素の株価が高騰しているのかもしれません。
この味の素から学べることは、
家庭用の技術力・商材を法人用に転換する
ということ。国内だけを見ると、家庭用食品市場は縮小が予測され、競争が激しくなります。その結果、何もしなければ、今の利益率は毀損されることになります。これを免れ、さらに成長するためには、既存の技術力・商材を法人向け商品に活用することも、一つの方法だと思います。もちろん、その前提には、技術力などの強みを磨く必要があります。
☆今日のまとめ☆
株価の上昇する味の素から学べることは、家庭用商品の技術力や商材を法人向け商品に活用したこと。
これにより、利益率低下を免れることになる。
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☆ 今日のこぼれ話☆
決算資料を見れば、本当に企業の内実がわかります。
消費者向け商品が目立ちますが、実は法人向け商品で利益の大半を稼いでいる企業は多いんでしょうね。
☆アニキ金本知憲の言葉☆
「可能性のある範囲で、できるかぎり高い目標を設定することが、努力するためには必要である。」(『覚悟のすすめ』より)
※『覚悟のすすめ』は、自分に弱い気持ちが出てきた時に、大きな力を与えてくれる本です。努力して結果を残した金本だからこそ、その言葉には重みがあります。