値下げをした吉野家が既存店売上を大きくV字回復できた理由(その1)
By jpellgen
5月に入り、吉野家の4月既存店売上高に関する記事が飛び込んできました。
吉野家ホールディングス(HD)が7日発表した4月の「吉野家」の既存店売上高は前年同月比11・1%増加した。前年を上回るのは7カ月ぶり。4月18日に牛丼並盛りの価格を380円から280円に値下げした効果で、客数が13・6%増と16カ月ぶりにプラスに転じたことが寄与した。(2013年5月8日付 日経新聞朝刊)
吉野家が、4月下旬に牛丼を280円に値下げしたことは、以前取り上げました。この値下げのニュースを見た時、値下げにより既存店売上がプラ転するのは難しいのではないか、と思いました。そう思った理由は以下の通りです。
【吉野家が値下げにより既存店売上をプラ転するのは難しいと思った理由】
[1] ターゲットとする若者・サラリーマンの人口が減少傾向だから
[2] 競合2社も同時期に値下げを行い、割安感が小さいから
[3] 吉野家の店舗自体に魅力が薄まっているから
しかし、実際には既存店売上高は11.1%も増加。ちなみに、2012年10月よりマイナスが続いていたので、この値下げのプラス効果がいかに大きかったかがわかるかと思います。
通常、値下げをする目的は、売上増につながる客数や売上数量の増加。ただし、以下の資試算でも分かる通り、値下げをすると、相当数の客数・売上数量の増加が無ければ、売上は増加しません。
【値下げの売上金額へのインパクトに関する試算】
通常100円のモノが100個売れていたとする。
その場合の売上金額は10000円。
100円X100個=売上10000円
そこで、100円のモノを90円に値下げする。
この場合、10000円の売上を確保するには、少なくとも112個売る必要がある。
90円X112個=売上10080円>10000円
つまり、10%値下げをすると、数量を11.2%多く売らなければならない。
10%値下げ→売上確保には売上数量11.2%増が必要
10%以上も多く売ることは、そう簡単なものではなりません。というのも、値下げをすれば、競合他社も追随して値下げをする可能性が極めて高いからです。その結果、数量はさほど伸びない一方で、売上は10%減少することになります。この現象に直面しているのが、今のスーパー業界でしょう。
しかし、吉野家はこのハードルをクリアしました。しかも、売上を前年並みに留めるどころか、10%以上も増やしているのです。この理由を考えてみました。
一つ目の理由は、
マスコミによる露出・注目がかなり大きかったから
ではないでしょうか。これにより、多くの人が吉野家の値下げのニュースを知ることになります。さらに、注目が大きかったため、競合するすき家・松屋の値下げのニュースが小さくぼやけてしまいました。これにより、「牛丼の値下げ=吉野家」と頭にインプットされた人は相当数いたかと思います。こういう人が、街で吉野家の看板を見かけたら、一度食べてみようと思っても、不思議ではありません。これが、競合も値下げをする中で、大きな集客を招いた要因のように思えます。
ちなみに、競合2社の4月の既存店売上・客数は、以下の通りです。
【牛丼3社の4月既存店売上・客数比較】
[すき家]売上96.5%、客数97.1%
[松屋]売上92.2%、客数94.1%
[吉野家]売上111.1%、客数113.6%
マスコミでの露出・注目の違いが、客数の差をもたらし、それが売上金額の差につながったのだと思います。
他の理由については、次の記事にて取り上げます。
☆今日のまとめ☆
吉野家が値下げにより既存店売上をV字回復できた理由として、マスコミでの露出・注目の大きさを挙げられないか。
注目度合の差が、同時期に値下げをした競合2社との客数の差を生み出した。
マーケティング・ビジネスのヒントに関するブログも書いています
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
舌に口内炎が出来ました。
特に、舌を噛んだわけでもないので、食べ過ぎなのでしょうか。
どちらかというと、飲み過ぎのような気もしますが。(笑)