具材改良で300円になった吉野家の牛丼並盛、本当に売れるのか?
“Gyudon revived! / 吉野家の牛丼(並・玉子付き)” by Hajime NAKANO
吉野家は牛丼のリニューアルを発表しました。
吉野家ホールディングスは25日、「吉野家」で4月半ば以降に販売する牛丼の具材を改良すると発表した。牛肉の熟成期間を約2週間延ばし、タマネギを増量。タレの成分として使う白ワインを増量してまろやかさを出すなどの改良も進める。(2014年3月25日 日経電子版)
日経新聞朝刊の記事を読むと、消費増税というよりも、消費者の品質志向の強まりを意識したリニューアルのように感じます。つまり、消費者は、もっと美味しい牛丼を食べたいと。
そこでふと思い出したのが、神戸市中央区中山手通りにある神戸牛丼・広重。お店の存在は前から知っていたのですが、ランチ時に前を通ったのはこの前が初めてでした。立地は決して良くなく(どちらかというと悪い)、しかも土曜日というのに、行列。まぁ、5・6人ほどの行列だから、強烈な行列ではありません。ただ、牛丼一杯1000円もする高級牛丼だけに、行列には驚きました。この行列を見る限り、美味しい牛丼を食べたいというニーズはあるようです。
しかし、これがそのまま吉野家に当てはまるとは思えません。広重の場合は、「神戸牛」というブランドが、1000円を許容させているのです。「神戸牛」が付くからこそ、牛丼チェーンの4倍近くの値段でも売れるのかもしれません。一方の吉野家の新牛丼は、長くなった熟成期間やらタマネギ・白ワインの増量という説明があるだけで、この説明がストレートに美味しさのアップにはつながりにくいと感じます。
また、損益分岐点も広重と吉野家では大きく違います。広重の場合は、行列ができたと言っても、5・6人ほど。店舗の大きさから考えても、客数はさほど多くはないでしょう。でも、小規模な単独店だから、損益分岐点を突破できるのです。一方の吉野家は、全国に多店舗展開し、立派な本社には多くの管理部門社員が存在しています。明らかに、広重よりも販管費が高いのです。その分、損益分岐点が上がるので、300円に値上げしたとしても、大量に売りさばく必要があるのです。
もし吉野家が、新牛丼をプレミアム牛丼として既存の牛丼と併売するならば、既存の牛丼が集客商品として機能するので、客数はさほど減らないと思われます。しかし、実際には、既存の牛丼をやめて新牛丼を代わりに提供するのです。その結果、昨年4月に実施した牛丼の大幅値下げにより獲得した顧客の多くを、失う可能性は極めて高いのではないでしょうか。今回の品質向上・価格改定により、吉野家の客数が値上げ前に逆戻りする危険性があります。
☆今日のまとめ☆
吉野家が行う牛丼の品質向上・価格改定により、大幅値下げによって獲得した顧客の多くを失う可能性がある。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
実際、品質向上した吉野家の牛丼は、どんな味なのでしょうか。
すき家・松屋と明らかに違えば、勝ち目がないわけではありません。