イオンなど小売企業が雑貨を強化する理由
イオンが雑貨専門店の大量出店に動くようです。
イオンは2015年3月に雑貨専門店事業を分社して本格的な出店を始める。これまでは自社のショッピングセンター(SC)内で展開してきたが、都心部の主要駅周辺に小型店を集中出店し、20年2月期に現在の約7倍となる100店体制を目指す。(2014年12月31日付 日経新聞朝刊)
雑貨を強化するのは、何もイオンだけではありません。雑貨強化の動きが強いのが、アパレル業界。例えば、
はるやま商事はカジュアルウエアの品ぞろえを手厚くした30代向けブランド「トランスコンチネンツ」で服飾雑貨の品ぞろえを増やす。…(中略)…ロゴをデザインしたバッグを復刻するなど雑貨を拡充する(2014年12月22日付 日経MJ)
ファッションの丸井から、飲食や雑貨を含めたライフスタイルの丸井に転換し、対象顧客を若者から全ての世代に広げる――。処方箋は明らかだったが、その実現には高いハードルがあった。(2014年10月31日付 日経産業新聞)
など、アパレル企業・百貨店などが、アパレル用品オンリーから雑貨との併売に動いています。
この動きの背景には、新興雑貨店の人気があるのでしょう。今年ブレークしたのが、格安雑貨店のASOKO。グローバルにその先を行くのが、欧州の雑貨店・タイガー。価格が割安という要素も大きいですが、行列ができるほど売れるとなれば、他の小売り業態も無視するわけにはいきません。
ただし、それ以外にも理由はありそうです。
【小売企業が雑貨を強化する理由】
- アパレル品よりも利用頻度が高く、その分コスパが高いから。
- 強い来店動機になるから
1について、アパレル品の場合、いくら気に入った商品でも毎日着るわけにはいきません。一方で、雑貨は自宅やオフィスなどで毎日でも使うことができます。例えば、置物なら、毎日見ることで毎日利用していることになります。もし、アパレル品と雑貨が同じ価格ならば、利用頻度の違いによりそのお得さも変わるはず。つまり、利用頻度の高い雑貨の方がコスパは高くなるのです。このコスパの差が、アパレル品よりも雑貨が売れる理由であり、雑貨の取扱を強化する小売企業が増えている理由なのです。
2について、雑貨は見ているだけで楽しめるもの。アパレル品とは違い、気に入ったデザインの商品が見つかっても、試着してサイズを確認する必要がありません。この手軽さが、雑貨の購入ハードルを引き下げているのではないでしょうか。その結果、雑貨売り場(ファッションブランドが販売する雑貨もあるので、「店」ではなく「売り場」と表現)の方が、来店しやすくなります。これが来店動機の高さにつながり、店舗の集客に結びつきます。例えば、待ち合わせ時間まで少し時間があった場合、試着しなければならないアパレル店よりも、見ているだけで楽しめる雑貨店に行く確率は高くなります。
来店動機の高さから雑貨販売を強化するということは、それだけ実店舗の集客が難しくなっていることの裏返し。好きなデザインの商品があっても、色・サイズの制約を受けるアパレル品の場合、即座に検索できるネット通販はかなり便利な購入手段です。試着はできないものの、実店舗には存在しないユーザー評価まで知ることができます。一方、雑貨は実際に見てみないと、その良さがなかなかわからないもの。だから、ネットよりも実店舗の方が好まれるのではないでしょうか。このニーズをうまく取り込んで、アパレル店が雑貨を併売すれば、アパレル店への集客を強化することができます。
アパレル品の場合、クローゼットという保管スペースの制約を受けることになります。クローゼットがいっぱいだから、これ以上服はいらないと考える人も多いはず。(この私がそう)一方、雑貨の多くは部屋に飾るものだから、保管(利用?)スペースの制約を受けません。雑貨があふれているから、もういらないという人はほとんどいないでしょう。アパレル品よりも雑貨の販売を強化するということは、モノ余り時代を反映していると言えるでしょうか。
☆今日のまとめ☆
小売企業が雑貨を強化するのは、消費者にとってアパレル品よりもコスパが高いからであり、簡単に購入できることから来店動機が高いからではないか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
久しぶりに大晦日に百貨店に行ったのですが、デパ地下はすごい人で混沌としていました。
イベントが消費を生み出すことを実感。
よいお年を。