移動スーパー・とくし丸が増えると食品業界に何が起こる?

moving stall shop

Ed Yourdon

 

先日、ガイアの夜明けで移動スーパー・とくし丸が取り上げられていました。近くにスーパーがないエリアに、トラックで食料品を販売するというのが事業内容。スーパーまで歩けない高齢者がターゲットです。移動時間・品揃えというハードルを考えると、ニーズはあっても収益性には疑問符が付いてしまいます。実際、番組では、とくし丸との提携に二の足を踏むシーンがありました。しかし、実際には十分採算は合っているのです。番組からわかったそのビジネスモデルは、以下の通り。

 

【とくし丸のビジネスモデル】

  1. 価格を気にしない高齢者がターゲット→単価引き上げ可能
  2. 実務は個人事業主に委託することで、顧客とのコミュニケーションが密に→囲い込み
  3. スーパーにとって既存顧客とのカニバリ無し→仕入れ先見つけやすい

 

マッチングビジネスの一種とも言えますね。遠くにあるスーパーと、遠出できない高齢者を結びつけています。さらに、個人事業主という雇用も生んでいます。運送業社や独立希望者がこの役割を担うのでしょう。番組によると、月30万円ぐらい稼げて、顧客の高齢者から「ありがとう」と言われるので、やりがいのある仕事であることは間違いありません。営業地域は過疎地なので、生活費もそう高くないので、月30万円なら十分暮らせます。スーパーにとっても、既存ビジネスとのカニバリは無く、逆にとくし丸を通じて、商圏住民へのブランドロイヤリティを高めることも可能です。

 

さらに驚いたのは、既に小売店のある地域での営業はしないという経営方針です。とくし丸はそもそも買い物難民を救うのが営業目的であり、既存事業者と競争することではありません。とくし丸が参入することで、既存の地元業者が潰れたら、本末転倒というわけです。この共生の姿勢、共感を呼ぶこと間違いありません。

 

一方で、商品供給側の食品メーカーは、とくし丸の登場の影響を受けることになります。それは、

 

商品選別の競争がさらに激しくなる

 

という影響です。とくし丸は移動車での販売なので、そう多くの品目を販売することはありません。その多くは、地元有名ブランドとシェアトップのナショナルブランド(NB)。二番手・三番手のブランドは、とくし丸に販売してもらうことはほとんど不可能です。一方で、通常のスーパーならば、とくし丸以上に販売面積があるので、二番手・三番手ブランドまで品揃えとして販売できます。さらに、期間限定で安く仕入れられたスポット品もあるので、売り込むメーカーにとっては、販売確率はとくし丸よりもずっと高くなります。この結果、ブランド認知度の低いメーカーでも、低コスト生産さえできれば生き残れることになります。

 

このように考えれば、とくし丸のシェアが今後拡大すれば、食品メーカー・ブランドの淘汰がかなり進むのではないでしょうか。この時の争点は、商圏でのブランド認知度。決して、日本全国でブランド認知度を高める必要はありません。その地域のトップブランドになればいいのです。

 

☆今日のまとめ☆

品揃えが限定的なとくし丸が今後増えれば、食品メーカー・ブランドの淘汰が進むのではないか。

この時の争点は、商圏でのブランド認知度になるだろう。

 

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  • 今日のこぼれ話☆

とくし丸は、面白いビジネスモデルですが、移動販売業務を担う個人事業主の稼ぎが減少すれば、そのモデルは崩れる可能性があります。

30万円をコンスタントに稼げるかどうかが、その分岐点でしょう。

 

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