食品廃棄を減らす動き、食品メーカーに振りかかる思わぬ落とし穴とは?
溜まりに溜まった日経ビジネスを読んでいたところ、2010年11月15日号で気になる記事がありました。それは、
『賞味期限、業界ルール変えるか』
という記事。食品流通業界では、賞味期間と販売期限について、以下のようなルールがあります。
1)小売店への納入期限は、賞味期間が1/3過ぎる前日まで。
2)小売店での販売期限は、賞味期間が2/3過ぎる前日まで。
3)賞味期間が2/3過ぎると、小売店から卸へ返品される。
これは、食品流通業界で特に明文化されたルールではなく、暗黙のルールのようなもの。ただ、一つの大手小売店で採用されると、他の小売店や卸がそれにならう傾向があるため、業界内では一般化しています。
記事では、この業界内ルールが、食品の廃棄の根源だとし、緩和する動きがあると報じられています。例えば、セブンイレブンは、販売期限を2/3から3/4に延ばしたという。また、ネスレは、返品率を下げるために、トップブランドのキットカットに関してのみ返品の受付をやめ、その代わり卸企業に対して転売支援金を払っているようです。政府も、食品廃棄を減らすために、表示面で動き出したようです。賞味期限を過ぎても食べられることを明記するという指針を策定するとのこと。賞味期限とは、「美味しく食べられる期限」なのだから、当たり前といえば当たり前。それを商品パッケージに明記するというのだから、少し過保護のような気もしないでもありません。
記事をサラッと読むだけでは、食品メーカーにとってはプラスのように思えますが、実際にはそうではないのです。それは、次の公式を見てもらえれば、わかります。
食品メーカーの生産量≒販売量=実際の消費量+廃棄量
右辺の廃棄量が減ることは、販売量が減ることになり、売上金額の減少につながります。また、販売量の減少は、生産量の減少を招きます。生産量が減れば、製造上のスケールメリットが小さくなるので、一袋あたりのコストが高くなり、食品メーカーにとっては利幅が小さくなります。このように、食品の廃棄が減ることは、食品メーカーの業績にはマイナスの要因になるのです。冷蔵庫の中をよく見れば、わかると思います。冷蔵庫の中に、醤油・ポン酢・ドレッシングなど多くの調味料が入っていると思います。そのうち、何本かは賞味期限間近か切れているのではないでしょうか。切れても使う消費者が多いならば、食品廃棄は大きな問題にはなりません。記事によると、家庭での食品廃棄量は、年間800万トン弱あるようです。だから、多くの家庭で、賞味期限切れの調味料は捨てることになります。そして、次の日、スーパーで新たに買うのです。もし、賞味期限が切れていても使う人が増えると、新たに買う消費者が減ることになります。そう、この現象は、食品メーカーにとって困ることなのです。
ただ、世間の流れから言って、今後廃棄を減らす動きは強まることを避けられません。ならば、食品メーカーは、このように売上や利益が減ることは避けられないかというと、そうでもありません。その方法は、
1)一袋あたりの単価を上げる。
2)リピーターを育てる。
高単価商品の売りが増えると、生産量が減ったとしても、売上と利益は確保できます。また、今後人口減少によって食品消費量が減ることを考えると、単価の高い商品の売上を伸ばすことは、食品メーカーにとっては必須のように思えます。ただ問題なのは、単価の高い商品は売りづらいということ。価格に頼らないプロモーションが必要になります。
リピーターについては、リピーターが増えると販売量がある程度見込め、生産効率が上がります。また、リピーターはメーカーのファンでもあるので、単価が高い商品も買ってくれる可能性が高いのです。
このように、食品廃棄の問題は、メーカーの販売戦略にも大きな影響を与えるのではないでしょうか。これまでの食品メーカーは、大量生産によって製造コストを下げ、大幅に値引きした特売価格で大量に販売することで、大きな利益を享受してきました。しかし、今後賞味期限を少し切れても食べられるという認識が広まるにつれ、販売量が減ることになります。つまり、これまでの公式が成立しなくなるのです。そのためには、高単価商品の販売を増やすことや、リピーターを増やすことが必要になります。その前提として、消費者とのコミュニケーションが、今後より重要になるように私は感じます。
☆今日のまとめ☆
食品廃棄削減の動きは、食品メーカーの生産量・販売金額・利益金額にマイナスの影響を与える。
その回避策は、高単価商品の売上を増やすことと、リピーターを増やすこと。
その前提として、消費者とのコミュニケーションが今後より重要になる。
☆11/26の目標 ☆
1 プライベートブログの更新 ◯
2 午前6時起床 ☓
3 毎朝、鏡の前で笑顔の練習 〇
4 腕立て・腹筋を各30回 ◯
5 部屋・事務所などの掃除をする ☓
6 手帳に今日の反省の明 日の希望を書く。☓
7 読書(書籍・雑誌)をする ◯
8 毎朝、ツイッターでつぶやく ×
☆今日のこぼれ話☆
大手食品メーカーは、テレビCMやネット広告など、消費者とのコミュニケーションを高める動きがありますが、中小メーカーにはまだまだその認識が薄いように感じます。
これまでは、マスメディアを使うしか消費者にアピールする場はなかったですが、今はネットがあります。
ネットを使えば、お金をかけずとも消費者とコミュニケーションを計ることは可能なのです。