【564号】ローカルニュースサイト・パッチ、収益改善策から学べることとは?

AOLBy Jason Persse

 

◎本日のニュース

1)見出し
For AOL, a Costly Gamble On Local News Draws Trouble
【出典】
http://goo.gl/U6TJy

 

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2)要約
ローカルニュースサイト・パッチドットコム(以下パッチ)は、
運営会社AOLにとって大きな悩みの種になっている。

その理由は、
パッチは赤字が続いており、そのパッチに投資を続ける
現経営陣の方針に対して、株主である投資家が異議を
申し立てているからである。

パッチの赤字体質の原因は、運営コストの高さにある。
地方在住の記者と広告営業担当者の維持に大きなコストがかかり、
広告収入で賄えない状態が続いている。また、運営方法に関して、
パッチの責任者と経営陣とで意見が相違している。

パッチの収益改善策として、地方担当の管理職の統合による
人員削減が計画され、また、ユーザーコンテンツの活用、
広告収入からの脱却、TV番組との提携が進められている。
さらに、トラフィック数が昨年と比べて急拡大するなど、
事業は好転している。

ローカルニュースサイトには、巨大メディア企業が
これまで参入してきたが、いずれも収益化できずに撤退している。
一方で、地方のフリーランス記者を活用するなど
低コスト運営に徹するイクザミナードットコムは、
収益化に挑戦している。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
It is tough to sell enough online ads to cover
the cost of producing local news, especially
while maintaining a local reporting staff and
a local advertising sales force.

4)キーとなる英文の和訳

ローカルニュースの編集コストを賄うのに十分な
ネット広告を販売するのは、難しい。
特に、地方の記者スタッフと広告営業員を維持する場合は、
格別だ。
5)気になる単語・表現
tough形容詞骨の折れる、難しい
force名詞集団

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
パッチドットコム(Patch.com)は、AOLが運営する
ローカルニュースサイト。その特徴は、
市町村ごとに単独のサイトを作っている点である。
例えば、カリフォルニア州だけでも、100個以上のサイトがあり、
各市町村のニュースを掲載している。例えば、「サンタモニカ」
「ナパ」「ビバリーヒルズ」などがある。

このパッチが、AOLにとって大きなお荷物になっており、
株主である投資会社から閉鎖・売却・他社との提携のいずれかを
要求されている。これに対し、アームストロングCEOは、
オンラインコンテンツへの投資を継続し、パッチの黒字化を目指している。
アームストロングCEOがパッチにこだわるのは、
アームストロングCEOがパッチの共同創業者であることもその要因だろう。
創業時のビジネスアイデア・ビジネスモデルは、意外に面白い。

創業者・アームストロング氏が考えたパッチの
ビジネスアイデア・ビジネスモデルは、以下の通りである。

◯ビジネスアイデアの発端は、自分の故郷に関する
時事情報が不足したことに失望したからである。
◯テレビ・ラジオ・新聞などへの年間広告費2000万ドルを負担する、
大企業や富裕層の多い小さな市町村がターゲット。
◯2000万ドルの1%でもシェアを取得すれば、
ローカルニュースサイトは黒字化できる。

広告収入に依存するニュースサイトの場合、
広告費を負担できる企業の存在がその前提になる。
さらに、企業は広告費を掛けるのは、
売上・利益の拡大を見越してのもので、
購入者の存在も欠かせない。そこで、多額の広告費を負担できる大企業と、
商品を購入できる余裕のある富裕層が存在する、
市や町にターゲットを絞った。パッチのサイトを見ればわかるが、
アメリカの全州でローカルニュースサイトを運営しているわけではない。
東部中心で、西部はカリフォルニア州とワシントン州のみ。
大企業と富裕層の分布図と一致するのだろう。

広告シェアを1%取得すればいいのだから、
このビジネスモデルは成功しそうであるが、
実際は上手くいってない。その理由は、運営コストが大きくなり、
広告収入だけでは賄えないからである。運営コストに関しては、
低コスト運営に徹する同業のイグザミナードットコム
(Examiner.com、以下イグザミナー)と比較すると、
そのコストの大きさが理解できる。

◯パッチ→1000人近くのフルタイムジャーナリストを雇用。
◯イグザミナー→本部勤務のフルタイム編集スタッフは30人以下。
記事や画像などのコンテンツ提供は、8万5000人以上のフリーランス地方記者を活用。

この結果、各ローカルサイトの売上が平均5万ドルに対して、
コストは15万~20万ドル。平均10万~15万ドルの赤字となる。
850以上のサイトを抱えるので、トータルの赤字は1億6000万ドルにも及んでいる。

この赤字体質に対して、アームストロングCEOが行う打開策は以下の通りである。

1.従業員の約2%を削減
2.ユーザーコンテンツの活用
3.広告収入依存からの脱却
4.テレビ局との提携

である。

1に関しては、東部担当と南部担当の管理職を統合するなどして、
約20の役職を削減するとしている。イグザミナーとの比較で、
パッチの人件費の大きさはよくわかる。固定費の大きな部分を占める
人件費の削減で、損益分岐点を引き下げることができ、
黒字化が容易になる。

2について、すでにコンテンツの1/3以上は、
ユーザーからのコメントや画像などで占められている。
トラフィックは急上昇しとおり、ユニークユーザー数は、
昨年4月が690万人に対して、今年4月は1030万人に達している。
この急増したユーザーは、パッチの経営資源であり、大きな強みである。
多くのユーザーが作ったコンテンツを活用することは、
強みである経営資源を活用することであり、競争力が増すことになる。
また、ユーザーコンテンツを活用することで、
フリーランス記者に支払っていた費用を減らすことができ、
経費削減にもつながる。

3については、商品販売を開始することが計画されている。
参考になるのは、WSJのワイン販売。また、日本のラジオ番組でもよく見られる、
番組パーソナリティによる通販も、同様の商品販売であろう。
広告を掲載するだけでなく、媒体自体が商品の注文を受けることにより、
手数料収入を獲得できる。この結果、広告収入依存から脱却し、
収益を多角化することになり、収益のブレを小さくできる。

最後にテレビ局との提携について。ニューヨークのテレビ局・WPIXと提携し、
夕方のニュース番組で、本部にいるパッチの記者がそのエリア内の
トップニュースを紹介するコーナーが、先週から始まった。これは、
ローカルニュース記事というパッチの持つ経営資源の活用にあたる
さらに、これまで、消費者向けに提供してきた経営資源を、
企業向けに提供したことにもなる。BtoBへの参入と捉えることができる。

これらをまとめると、次のようになる。

【パッチの収益改善策】
1.固定費の削減
2.強みである経営資源の活用
3.収益の多角化
4.BtoBへの参入

業績低迷の続く企業にとって、パッチのこの収益改善策は参考になるだろう。

Patch.com http://www.patch.com/
Exmaminer.com http://www.examiner.com/
WSJのワイン販売ページ http://goo.gl/64ei4
AOL http://www.aol.com/

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《今回のヒントのまとめ》
1)赤字の続くローカルニュースサイト・パッチドットコムは、
AOLのお荷物になっており、閉鎖・売却・提携などを株主から要求されている。

2)これに対し、アームストロングCEOはコンテンツへの投資を続け、
収益改善を計画している。

3)収益改善策は、人員削減による固定費の削減、
大きな経営資源である巨大なユーザー数の活用、
商品販売による収益の多角化、テレビ局との提携による
BtoBへの参入である。

4)これらの改善策は、メディア企業だけでなく、
業績低迷に悩む多くの企業にとって、参考になるだろう。

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編集後記
思えば、インターネットを始めた頃からAOL会員でした。
1995年頃、接続サービスがあり、接続サービス会員になれば、
他のサイトにはないサービス(チャットや掲示板)を利用できたのが
、接続サービス会員になった理由。
接続サービスはまだあるみたいですが、
完全にコンテンツ企業になったようです。
今ではメールアドレスまで無料で作れます。
時代を感じますね。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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