アパレル店でセール前倒しが激しくなっている要因とは?
by courtesy of Gerard Stolk
日経ビジネスオンラインで、次のような記事を見つけました。
セールは「後ろ倒し」どころかどんどん早くなっている
6月初旬に「プレセール」が常態化
昨年夏から、三越伊勢丹ホールディングス(HD)とJR東日本グループのファッションビル、ルミネが突如として「セール後ろ倒し」を叫んでいる。それに よって、実際、何か業界に対して好影響があったのかというと、身の回りで取材している限り、そんな声は聞かない。今夏のルミネのセールは7月12日、三越 伊勢丹HDのセールは7月17日の開始となったのだが、実際のところセール後ろ倒しがこの先、根付くとは思えない。(2013年7月31日 日経ビジネスオンライン)
この記事で言いたいことは、三越伊勢丹などで「夏のセール後ろ倒し」が話題になっていますが、現実は前倒しでセールを行うお店が増えているということです。一方、ラフォーレなどは、特に宣言することなく、昔ならセール時期を独自に設定しているようです。伊勢丹やルミネの後ろ倒し策に関して、ネガティブな意見を投げかけています。
では、なぜセールを「前倒し」するのか。それは、
前倒しで行う競合に顧客を奪われる可能性があるから
に他なりません。逆に前倒しをすることにより、
顧客を維持するとともに、競合から顧客を奪うことができる
というメリットがあります。しかし、一方で「前倒し」にすることにより、
プロパー価格での購入が期待された顧客がセールまで待つ
というリスクを抱えることになります。この両者は、アパレル店の収益にとって、次のような結果をもたらすことになります。
【セール前倒しがもたらす結果】
[1]顧客維持・競合から顧客奪取→売上増・利益増
[2]顧客のセール待ち・プロパー価格離れ→売上減・利益減
全く異なる結果をもたらすわけですが、それでも「前倒し」をするということは、2よりも1の結果の方が大きいと判断したからです。
この背景には、次のような外部環境の変化があるのではないでしょうか。
【セール前倒しになびかせる外部環境の変化】
[1]競合店舗との顧客の奪い合いが激しくなったから。
[2]品質・ブランドよりも価格を優先する消費者が増えたから
1は、それだけ店舗が増えたことが要因です。大阪・梅田を見たら分かる通り、徒歩で行ける範囲に、グランフロント大阪あり、ルクアあり、そして4つの百貨店があります。ここまで店舗が増えれば、競争が激しくなっても不思議ではありません。よって、競合する店舗がセール「前倒し」を行えば、自社もせざるを得なくなるのです。
2については、消費者の懐事情が要因です。アパレル品なら、本当は品質やブランドで選びたいものの、可処分所得が増えない以上、いつも品質・ブランドで選ぶことはできません。よって、同じような商品ならば、できるだけ安い・割引率の高い商品を選ぼうとするのです。その結果、「セール」「SALE」の文字に引きつけられる確率が高くなり、それを知った店舗側はセールの「前倒し」で既存顧客の維持・新規顧客の獲得を目指すのです。
ただし、アベノミクス効果で、2の要因は少し弱まっている模様。つまり、景気がよくなりそうな世間の雰囲気によって、可処分所得が増えそうな気分になり、その結果、価格よりも品質・ブランドで選ぶ人や場面が増えているのではないでしょうか。実際、セールを「後ろ倒し」した三越伊勢丹では、プロパー価格での販売が増えたようです。
三越伊勢丹ホールディングスは17日、競合他社より約3週間遅らせた夏物のバーゲンセールを始めた。主力の伊勢丹新宿本店(東京・新宿)は初日の売上高が昨夏のセール初日(7月13日)を3%上回り、出足はまずまず。先行した他社のセール中も株高に猛暑が重なり、高級ブランドなどの高額品に加え、値引きをしていなかった衣料品も好調だった。(2013年7月18日付 日経新聞朝刊)
競合店舗の増加は、自社だけではどうしようもありません。しかし、消費者の品質・ブランドよりも価格優先の姿勢は、店頭での売り方やPOPも含めたコミュニケーション方法によって、変えることができるのではないでしょうか。少なくとも、セールの「前倒し」は価格競争に他ならず、消耗戦でしかありません。
☆今日のまとめ☆
セールの「前倒し」が激しくなっているのは、競合店舗との競争激化と消費者の価格優先による。
前者はどうしようもないが、後者は売り方・コミュニケーション方法によって、変えることができるのではないか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
最近増えたのが、「全品◯◯%引き」や「2点以上で◯◯%引き」ですね。
この表示があるお店は、それなりの集客に成功している模様です。
人が集まると、さらに人を呼びます。
これを期待しているのかもしれないですね。