吉野家の7月実績、既存店売上の増加率鈍化は本当に嘆かわしいことなのか?
吉野家の7月月次実績が発表されました。
牛丼大手3社の7月の既存店売上高が出そろった。4月中旬に牛丼並盛りを値下げした吉野家ホールディングスの「吉野家」は前年同月比の伸び率が大幅に鈍化した。一方、高単価商品を強化している松屋フーズの「松屋」はマイナス幅が縮小した。ゼンショーホールディングスの「すき家」は客数が増えず、依然として苦戦が続いた。(2013年8月7日付 日経MJ)
この文章を読む限り、吉野家の既存店実績は、そのV字回復が緩やかになっている模様。吉野家の勢いが鈍化しているので、「吉野家、大丈夫か」という気持ちになりますが、その中身を見るとそうではないようです。それどころか、戦略がドンピシャで当たったと感じるほどです。
【吉野家7月既存店実績】
[既存店売上高]101.2%
[客数]107.7%
[客単価]93.9%
日経MJが指摘しているのは、既存店売上高の増加率が鈍化していること。実際、
4月 111.1%
5月 115.9%
6月 110.8%
7月 101.2%
と鈍化しています。4月終わりに牛丼並の価格を下げましたので、その効果が一番大きかった5月を頂点にして、増加率は下り坂です。7月はぎりぎり前年プラスになったほど。この要因は、客数にあるようです。
【吉野家の既存店客数】
4月 113.6%
5月 131.0%
6月 122.0%
7月 107.7%
客数は既存店売上高と同じトレンドを形成しています。マスコミで牛丼値下げを大きく報じて、これまで吉野家をあまり利用しなかった消費者が吉野家を利用したものの、その多くは常連客にならなかったということに示しています。
ただ、客単価を見ると、吉野家の既存店業績の見方も変わってきます。
【吉野家の既存店客数】
4月 97.8%
5月 88.5%
6月 90.8%
7月 93.9%
減少率は、5月を底にして上昇に転じているのです。これは、
値下げによって吉野家の常連客になった人のうち、280円の牛丼並以外の商品を注文する人が増えている
ということを、物語っているのではないでしょうか。さらに、7月の客単価の改善が、6月よりも大きいことがわかります。
7月の改善ポイント:3.1ポイント(=93.9-90.8)
6月の改善ポイント:2.3ポイント(=90.8-88.5)
この要因は、7月に投入した480円のプレミアム丼ではないでしょうか。この単価の高い商品が、それなりに売れているからこそ、6月よりも客単価の減少率が小さくなったいるのだと思います。
もしかしたら、以前取り上げた中間価格帯の牛ネギ丼が、思った以上に売れているのかもしれません。吉野家の計画が、480円のプレミアム丼で注目を集め、収益性の高い380円の牛ネギ丼で客単価を引き上げようというものであったならば、7月の既存店実績を見る限り、計画通りになったと言っていいかもしれません。
プレミアム商品・中間価格帯の商品を投入することによって、中間価格帯の商品に誘導させるという吉野家の客単価引き上げ方法は、とても参考になるのではないでしょうか。
☆今日のまとめ☆
吉野家の7月既存店売上は、その増加率が鈍化している。
しかし、客単価の減少率は大きく改善している。
これは、プレミアム丼・中間価格帯商品の投入によって、導かれたものではないか。
ならば、計画通りと言えるだろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
吉野家のサイトを見ていると、食べたくなりました。
この気持ちをどう来店につなげるか。
売上を伸ばす方法は、まだまだ多くあります。