シニアのネット消費データとビジネスチャンス
シニアのネット消費に関するデータが、日経新聞に掲載されていました。
日本経済新聞社が実施した「第2回ネットライフ1万人調査」ではインターネットを巧みに活用するシニアの姿が明らかになった。最近1年間にネットで買い物した比率は60歳以上が食料品など4分野でトップ。ネット消費の総額も年間23万円を超え、全体平均を上回る。じっくり品定めする一方、安さへのこだわりは薄い。ネット消費のけん引役として、シニアは存在感を増している。(2013年10月23日付 日経新聞朝刊)
ネットに関するデータで注意が必要なのは、その調査方法。ネットでのアンケート調査ならば、ネット利用率が高いのは当然だからです。ちなみに、今回のアンケートもネット経由で実施されたものなので、ネット利用率が若干割増されていることを考慮する必要があります。
割り引いた上で、興味深いデータを抽出すると、以下のようになります。
【興味深いシニアのネット消費に関するデータ】
[ネット購入率の高い品目]食品53%、IT関連製品54%
[重視すること]時間を気にせずに買い物できる、店員とのやりとりがなく煩わしくない
[平日のパソコン経由ネット利用時間]2時間41分で全体平均よりも30分多い
[価格へのこだわり]37%で、全体平均より低い→じっくり品定めしている
[ネット接続端末]パソコン中心、スマホ所有率は14%(全体39%)、タブレット所有率11%(全体15%)
[スマホ・タブレット利用時間]10代・20代に次ぐ長さ
これらのデータからわかることは、以下の通り。
【シニアのネット利用データからわかること】
[1] 価格の低さよりも品揃え豊富な中から選びたいというニーズあり
[2] 実店舗に対して営業時間の制約や店員の接客に不満あり
[3] スマホ・タブレットが普及すれば、パソコンから大きくシフトする確率が高い
1について、ネット通販がとかく価格競争に陥りやすいことを考えれば、価格よりも品揃えや品質を重視するシニアユーザーは、神様のような存在かもしれません。価格差で浮気しがちな若者を多数獲得するよりは、リピートする確率が高いシニアを少数でも顧客として持つ方が、長期的には収益にプラスになることがわかります。逆に考えれば、今後シニアネットユーザー獲得競争が激化する可能性が高いとも言えます。
2について、ネットを利用する動機・理由は、店舗に対する不満の裏返しでもあります。シニア層は店員とのコミュニケーションも重視する人が多いと考えていたので、接客を煩わしく思う回答に違和感がありました。しかし、接客をして欲しくないと考えるシニアだからこそ、ネット通販を利用しているのかもいしれません。当たり前のことですが、接客を求めているのかどうか、実店舗に来店したシニア層を見極めることは極めて重要です。
3について、パソコンからスマホ・タブレットへのシフトは、シニア層だけに起こっていることではありません。ただし、パソコンメーカーは販売者にとっては、パソコンからネット接続するシニア層は、最後の上顧客になる可能性があります。パソコンでしかできないこと、もっと利便性の高いパソコン利用法をアピールすることによって、シニア層のパソコン利用をつなぎとめておく必要があります。
日経には、次のような興味深い考察がありました。
全国的に中小の小売店舗は減っているため、シニアにとっては郊外などの遠くにある大型店に通うのは負担が大きくなっている。このため、自宅の「玄関先」まで届くネット通販の商機は今後、さらに広がる見通しだ。(同上)
大型店にとっては、頭の痛い現実です。今後増加するシニア層が離れていけば、大型店の収益に大きく影響を及ぼすでしょう。逆に、中小の小売店舗には朗報。シニア層が好む品揃えやサービスを充実させれば、大型店から顧客を奪えるかもしれません。
価格よりも商品そのものを重視するシニア層を顧客としていかに獲得するかが、価格競争に巻き込まれない鍵とも言えます。さらに、一度気に入ってもらえれば、再来店する確率が高いので、長期的に収益に大きく貢献します。消費者向け商品を取り扱う企業は、シニア層へのシフトは避けられないのではないでしょうか。
☆今日のまとめ☆
シニアのネットユーザー調査からわかることは、価格よりも商品そのものを重視するというシニアの姿勢。
さらに、接客を煩わしく思うシニアの存在。
価格競争に陥る確率が低く、長期収益に貢献してくれるシニア層をどれだけ顧客として獲得できるかが、企業収益を左右するだろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
もちろん、それだけ旨みのあるシニア層なので、獲得競争が激しいのは確か。
逆に考えれば、浮気がちな若年層に注目した方が、競争は緩やかかもしれませんね。