平和堂が教えてくれる、GMSの新しいビジネスモデル

海外のジャスコby courtesy of Nilufer Hajra

日経新聞の近畿面に、消費増税に関する流通企業経営者の記事が、連載されていました。第一弾は、滋賀・京都を中心にGMS・スーパーを多店舗展開する平和堂です。

2013年3~11月期は売上高が2%増、経常利益が10%増と表面上は順調だ。だが既存店ベースで売上高を見れば大変だ。食料品は前年超えを維持してい るが、天候不順もあって衣料品や住居関連は悪い状態が続いている。チラシをまく回数の削減や発光ダイオード(LED)照明の導入、従業員の適正配置といっ たコスト削減の徹底で利益を出している(2014年1月21日付 日経新聞朝刊)

この記事で注目したのは、以下の点。

【平和堂の消費増税後の施策】

[1]20代~30代は節約志向が一段と進む。理由は、所得の大きな伸びが期待できず、一方で結婚・出産で支出が増えるから。

[2]60歳以上のシニアは人口が増加し、消費増大が期待できる。この層の集客に力を入れる。

[3]シニア集客策として、男性向けの梅酒漬け方教室などサービスに力を入れ、材料・道具の購入を促す

平和堂も、消費者の二極分化を実感しているのか、若者世代と高齢世代で消費行動が大きく変わると予想しています。若年層は節約志向を高めるのに対し、シニア層は気に入れば高単価商品を購入すると考え、シニア層の集客に力を入れる様子。これは、都会も地方も同じようです。

さらに、売り方にも工夫を凝らすとのこと。それは、モノよりもコトに力を注ぎ、モノの販売につなげるという工夫です。

化粧品やたばこ、コメの駆け込み消費は必ずあるが増税のギリギリ前だろう。4月以降は売れ筋がガラリと変わるとみている。1997年の増税時は初年度で前 年度比4%強売上高が落ちた。今回も前年並みの売り上げを確保するのは難しいだろう。とはいえ入学や就職など『コト』に絡めて売り場をつくり、買う動機づ けをしていくことで悪くても2%減程度にとどめたい(同上)

単にモノを並べているだけでは、消費増税による値上がりで、消費は衰えるだけ。そこで、イベントなどのコトに絡めた売場を作ることで、モノの購入を促そうという考えです。

モノからコトへのシフト

という、小売のトレンドをとらえた施策と言えます。

平和堂などのGMSが直面する課題は、食品の売れ行きはいいものの、利益率の高い衣類・日用雑貨の売上が減少し、その結果儲からなくなったということ。

【GMSの従来型ビジネスモデル】

[1]食料品の特売で集客

[2]利益率の高い衣類・日用雑貨で収益獲得

このビジネスモデルが機能しなくなったのは、ホームセンター(HC)や専門店(ユニクロなど)が台頭したからで、値下げした食料品は売れるものの、肝心の衣類・日用雑貨が売れないという状況に陥っています。

HCや専門店に顧客が奪われているのは、販売商品の競争力が落ちているからに他なりません。商品力が負けている、または、価格が高いという理由で、HC・専門店に既存顧客がシフトしています。ならば、商品力を高めればいいということになりますが、商品力で勝負をしても、いずれ真似されるのがオチ。値引きしても、価格競争に陥るリスクがあるだけです。

ならば、どうやって利益率の高い衣類・日用雑貨を売ればいいのか。それは、平和堂が行おうとしているコト(体験など)と利便性ではないでしょうか。コトは、その商品を実際に使うシーンを売場で明確に伝えることにより、その商品の必要性を訴えることです。その最たるものが、梅酒漬け方教室などの体験。体験すれば、その商品の有用性を実感するので、購入までの道が大きく短縮されます。

利便性とは、購入頻度の高い食料品と一緒に購入できるという便利さです。ワンストップショッピングとも言いますね。この利便性を特に重視するのは、シニア層。便利ならば、少々高くても買ってくれる層です。一方、買いまわりを厭わない若者には、この利便性はあまり期待できず、シニア層だからこその価値とも言えます。(仕事に忙しい層も利便性は重視しますが、だからと言ってGMSで衣類や日用雑貨を購入するとは思えない。)品揃えに限りのあるコンビニは、買い物を楽しみたいというシニア層にとって、ワンストップショッピングという利便性という点で、GMSには敵いません。

【GMSの新たなビジネスモデル】

[ターゲット]利便性を価格よりも重視するシニア層

[収益商品]衣類(特に下着)・日用雑貨

[販売方法]コトでの訴求

GMSは、「何でもあるが、欲しいものがない」と、一時揶揄されてきましたが、食料品とワンストップで買い物ができる点で、移動を嫌うシニア層には大きな価値を提供する可能性があります。ただ、その場合でも、単にモノを並べているだけでは売れるというわけではなく、コトを通じて、買う必要性を訴えなければならないように思えます。少々高くても価値を認めれば買ってくれるシニア層から支持を得られれば、GMSが今後復活するかもしれません。ただ、その場合、セルフ販売から少し脱却する必要があるかもしれません。コスト増につながるだけに、これができるかどうかで、儲かるGMSに転換できるかどうかが、決まるのではないでしょうか。

 

☆今日のまとめ☆

GMSの新しいビジネスモデルとは、ワンストップショッピングという利便性を重視するシニア層をターゲットにして、コトの訴求で、利益率の高い衣類・日用雑貨を販売することではないか。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

GMSの衣類売場を観察すると、固定客は存在するようです。

普段利用しない店舗・売場には、意外な発見がありますね。

 

 

 

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