マクドナルドにヘルシーメニューは必要か?
日経ビジネスにマクドナルドの客離れに関する記事がありました。マクドナルドを利用しなくなった理由や代わりに利用するようになった業態を、アンケートにて調べたもの。やっぱりと思ったのは、「マクドナルドの頻度が減った代わりに利用するようになったところ」という質問に対する回答です。第一位はマクドナルドも競合と捉えるコンビニ、そして第二位は、なんと「そもそも外食する機会が減った」という回答です。これにはコンビニも含まれるわけで、回答の選択肢としては不適切と思わざるをえないのですが、これはまさに真実ではないでしょうか。つまり、マクドナルドを利用しなくなったのではなく、外食をやめて総菜や自炊に切り替えたというものです。
このような回答になった背景としては、
マクドナルドのターゲット層の購買力低下
人口の高齢化
があるのではないでしょうか。
マクドナルドのターゲットとして考えられるのは、家族と若者。この若者の購買力が落ちたから、外食自体を止めたというわけです。その代わり利用したのが、コンビニやスーパーの総菜。そもそも持ち帰りの総菜は、ファストフードよりも安いもの。その品質が向上すれば、コスパはより優ります。だから、マックからコンビニシフトしたと。食材一つで簡単に料理ができる加工食品の種類が増えた、安くなったことも少しは影響しているでしょう。
高齢化をマック不振の要因と考えるのは、個人的な経験から。大学生の頃や20代の時は、私もマックをよく利用していました。手軽に安く食べられますから。ハーゲンダッツでバイトしている時の食事は、ほぼ毎回マックだったと記憶しています。そんな私でも、30代に入ってからはマックの利用機会は一気に減りました。それは、ハンバーガー自体食べたくないから。それよりも、牛丼や定食など和食の方がいいのです。30代になった時の私ですらそうなのですから、人口の高齢化により、ハンバーガーを食べる層自体が減ったことは十分考えられます。
ちなみに、なぜモスはマックほど衰退しないのか?それは、シェアがマックよりもずっと小さいことと、そもそも品質重視のハンバーガー好きをターゲットにしていたこともあるのではないかと、考えています。そういう層は、年を取っても一定の頻度でハンバーガーを食べると。モスにはライスバーガーというのもありますし、高齢者がハンバーガーを食べたい数少ない機会をモスは獲得しているのかもしれません。
記事の最後に、マクドナルドに求める改善点に関する質問の回答が掲載されていました。20%以上の回答を列挙すると、
1位 食の安全が確保できたら 61.4%
2位 もっと安くなったら 32.3%
3位 おいしくなったら 23.8%
4位 メニューがヘルシーになったら 23.7%
になります。1位の安全安心の問題は、今回の不祥事の影響が色濃く残っていることを物語っています。ただし、他の外食チェーンの提供する料理が安全かと言えば、疑問が残るので、安全・安心を確保したからと言って、マックは復活するとは言えません。逆に、利用食材をすべて国産にしたからといって、価格が上がればさらに客離れを起こすことでしょう。
2位・3位こそ、これから対処すべき一番の問題だと思います。価格については、「マック=意外に高い」というイメージがかなり色濃くなっています。これを払拭するために、昼マックというキャンペーンを実施していますが、それでも不十分。500円でレギュラークラスのセットが常時食べられないと、汎用型ファストフードとして利用されることはなかなか難しい。
美味しさの問題は、決してまずくなったというのではなく、周りのレベルの向上したために、相対的に美味しくなくなったと認識しています。スーパーの総菜・コンビニ弁当から加工食品まで、外食・中食(総菜など)・内食(自宅調理用の加工食品など)すべてのレベルが上がっています。これに追いつけなかった、というのがマクドナルドの問題。グローバルブランドで補えると思ったのかもしれません。そこまで日本人の舌は、甘くなかった。
4位のヘルシーさについても、私はかなり疑問に思います。以前、このブログで「マクドナルドはヘルシーメニューを導入すべき」と書いたことがあったかもしれませんが、今ではそう思いません。というのも、そもそもマクドナルドにヘルシーさなんて期待しないから。期待するのは、ジューシーなパティの美味しさであり、ボリュームたっぷりのハンガーバーであり、熱々のフライドポテト。マクドナルドは、アメリカのジャンクフードの代表であり、体にいいとは思わないけど、ガッツリ食べたい時に利用するチェーンなのです。
だからと言って、このまま既存メニューと既存食材を使った特別メニューだけではいいと思いません。サラダやフレッシュ野菜ジュースなどの野菜を使ったヘルシーメニューは必要かもしれません。しかし、それはあくまで選択肢を増やすためだけであり、本当に取り組むべくはジューシーさ・ボリューム感の向上だと思います。このアンケート結果を鵜呑みにして、ヘルシーメニューの導入と向上にばかり力を注いでいたら、他との同質化がさらに進み、今でも利用するコアなファンが離れる最悪の自体が起こるかもしれません。トランス脂肪酸不使用など、最低限のヘルシーさだけがあればいいのです。最低限のヘルシーさを担保した上で、ジューシーさ・ボリューム感を追求すべきでしょう。このヘルシーな環境整備のためのコスト上昇分を、いかに他の部門で削減できるかが、勝負の分かれ目です。
それにしても、若者ターゲットの商売は、本当に難しいと思いますね。新しい商品に食いつく確率が他の年齢層よりも高いですし、さらに購買力も相対的に低いですから。値段を下げれば、今のマクドナルドのように「本当は来て欲しくない」客層で溢れる恐れがあります。かと言って、高単価路線を取れば、若者からそっぽを向かれる恐れがあります。
☆今日のまとめ☆
消費者がマクドナルドに求めるのは、ヘルシーメニューではない。
最低限のヘルシーさを担保した上での、ジューシーさ・ボリューム感だろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
原田さんが高単価路線を取ったのは、客層を変えたかったからかもしれませんね。
荒れた店舗を見ると、いくら安くても行こうとは思いません。