マクドナルドのベジタブルチキンバーガーとモスのソイパティの違いは無視できない。
マクドナルドのベジタブルチキンバーガーの発売を知った時、モスのソイパティが思い浮かびました。どちらも、ヘルシー志向に対応した商品だからです。そのモスのソイパティは、売れているようです。
モスフードサービスは5月19日からハンバーガー店「モスバーガー」の定番8商品で、肉のパティを大豆由来のソイパティに変更できるようにする。3月にソイパティを使った2商品を期間限定で発売したが好評だったため、定番商品でも選択できるようにする。通常のパティよりも50キロカロリーほど抑えられるため、健康志向の女性などから人気があるという。(2015年4月27日付 日経MJ)
「好評」とだけ表現されており、販売予定比など数字が示されていないので、この記事だけで「ソイパティは売れている」と表現するのはどうかと思いますが、期間限定商品を定番に格上げするのは、売れているからでしょう。実際の注文数はそう多くなくても、ソイパティを導入することで、女性の集客には少なくとも成功していると思います。
一方のマクドナルド、ベジタブルチキンバーガーは5月22日発売とあって、その売れ行きに関する記事は、日経にはまだ掲載されておりません。ツイッターなどウェブで検索すると、批判的な意見がある一方で、「こういう味を待ってました!」といったかなり好意的な意見もあり、賛否両論といったところでしょうか。売れ行きの判断は、6月の月次データを見てからになりそうです。
そこで、マクドナルドのベジタブルチキンバーガーとモスのソイパティを、実際の味以外で比較してみました。
【マックのベジタブルチキンバーガーとモスのソイパティの比較】
[提供方法]
ベジタブルチキンバーガー→一つのメニューとして提供
ソイパティ→通常のパティのオプションとして提供
[ネーミング]
ベジタブルチキンバーガー→「ミックスベジタブル」を想起させるネーミング
ソイパティ→「大豆」「豆乳」を想起させるネーミング
まずは提供方法について。マックのベジタブルチキンバーガーは、一つのメニューとして提供しています。よって、野菜を練り込んだパティを食べたければ、ベジタブルチキンバーガーを注文するしかないのです。あっさりした味しかないのにで、マックのハンバーガーとしては異色なこの味が合わなければ、失敗したということになります。
一方のモスのソイパティは、通常のパティのオプションとして提供しているので、例えばミートソースのかかったモスの定番「モスバーガー」が好きな人は、この味でパティだけをソイパティに変えることができるのです。味はそのままで、だけど少しでもヘルシーがいいという顧客向けということになります。
ハンバーガーを食べたいという時は、あの「ジューシーさ」を求めている時。「あっさり」とした「野菜」たっぷりのサンドイッチを食べたい時は、サブウェイを選ぶのが普通でしょう。セットメニューの価格も、サブウェイはマックとさほど変わりません。(350円の昼マックを別すれば)モスと比べると、サブウェイの方が安いほど。では、「ジューシーさ」を求めている人が、マックのベジタブルチキンバーガーで満足できるかといえば、かなり疑問。強いて言えば、どうしてもハンバーガーは食べたくはない時に、子供や友人とマックに行かなければならない人には、ベジタブルチキンバーガーは満足な選択肢となるでしょう。
一方のモスは、ソースや付属挿入品は同じで、パティだけがソイパティになるので、メニューの味はそう変わらないと思われます。だから、「モスバーガー」のミートソースを期待した人は、ソイパティにしても十分満足できるのです。よって、ベジタブルチキンバーガーとソイパティのどちらが、顧客満足度が高いかと言えば、後者になるでしょう。
ネーミングに関しては、マックのベジタブルチキンバーガーは、「ベジタブル」という単語が入り、さらに「にんじん」「枝豆」「コーン」が練りこまれたパティということで、「ミックスベジタブル」を連想する人は多いのではないでしょうか。そして、「ミックスベジタブル」と言えば、冷凍食品で「チープ」な感じは否めません。よって、ベジタブルチキンバーガーは、そのネーミングから「チープ」なイメージになってしまうのです。ちなみに、「ベジタブル」でグーグル検索すると、第一位はベジタブルの意味、第二位はベジタブルマラソンin彩湖、そして第三位にミックスベジタブルになります。(「ベジタブルチキンバーガー」は除く)
一方のソイパティは、「ヘルシー」なイメージが満載です。同じように「ソイ」でグーグル検索すると、第一位は魚貝百科、第二位にクロソイ市場魚貝類図鑑、第三位にウィキペディアとなります。(「ソイパティ」は除く)「ソイパティ」と同じ意味の「ソイ」では、豆乳のキッコーマンソイフーズとスタバのソイラテが10位以内に入っています。スタバのソイラテの知名度の高さからすると、「ソイパティ」から「大豆のパティ」と連想され、「ヘルシー」なイメージに繋がりやすいのではないでしょうか。「ベジタブル」のような「チープ」なイメージはなく、モスは「ヘルシー」さの訴求に成功しやすくなります。
この提供方法・ネーミングの違いが、マックのベジタブルチキンバーガーとモスのソイパティの成否の違いにつながっているのではないでしょうか。特にネーミングは、まだ食べたことのない消費者の集客にも影響するだけあって、影響が大きい要素でしょう。
☆今日のまとめ☆
マックのベジタブルチキンバーガーとモスのソイパティの違いは、その提供方法とネーミング。
マックは一メニューとして提供するのに対し、モスはパティのオプションとして提供するので、味の期待外れは起こりにくい。
また、「ベジタブル」という単語からは、「ミックスベジタブル」という「チープ」なイメージが想起されやすいのに対し、「ソイ」からは「大豆」「ヘルシー」というイメージが浮かびやすい。
この2つの違いが、売上に影響するのではないでしょうか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
恐らく、マックは「ベジタブル」というわかりやすい単語を使うことで、野菜嫌いの子供に野菜を食べさせる手段を母親に提供したいのだと思います。
ただ、子供があの味を好むかはかなり疑問です。
やるなら、テリヤキでしょうね。