【552号】ダラーシェイブクラブ、寡占のカミソリ市場に新規参入できた理由とは?

◎本日のニュース

1)見出し
A David and Gillette Story
【出典】
http://goo.gl/wL5tL

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2)要約
数週間前にカミソリの販売を開始したECサイトが、

人気を博している。
このサイトの名前は、ダラーシェイブクラブ。このサービスでは、
カミソリと替刃を月3ドル~9ドルで定期購入により販売する。カミソリと替刃の市場は、全世界で約1280億ドルもの規模を持つ。
その市場の8割以上を大手企業が占めている。大手企業は、
膨大なマーケティング予算と緻密な消費者調査、
密接な小売店との関係を通じて、市場の大部分を囲っている。しかし、ユーザーの価格に対する不満を解消することにより、
ダラーシェイブクラブなど定期購入による販売スタイルの新規参入
増えている。新規参入余地が生じた要因は、市場を占有する大手企業が、
値下げせずに既存の収益源を守るために、
価格への不満に対応しなかったからである。

これに対し大手企業は、替刃の頻度を正確に伝えることにより、
定期購入商品よりも従来の商品の方が経済的であることを強調している。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
The e-commerce start-up opened its doors just a few weeks ago,
and has already developed a following for its quirky approach to
hawking razors and blades for a $3 to $9 monthly fee.

4)キーとなる英文の和訳
創業したばかりのネット通販企業は、
数週間前にオープンしたばかりであるが、既に一定の支持者を集めている。
それは、カミソリと替刃を月3ドル~9ドルで販売する
サービスの認知を広げるために、一風変わったアプローチ方法を
採ったからである。

5)気になる単語・表現
following名詞従者たち;支持者
quirky形容詞一風変わった
hawk他動詞~を売り歩く
razor名詞カミソリ
blade名詞刃

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
カミソリと替刃の世界市場規模は、約1280億ドル。
この市場のシェア上位企業・サービスは以下の通り。

◯ジレット(Gillette)→シェアは約66%。
生活用品大手プロクター・アンド・ギャンブル社
(Procter & Gamble Co.)傘下。
◯シックウィルキンソンソード(Schick-Wilkinson Sword)
→シェアは約12.5%。エナジャイザーホールディングス社
(Energizer Holdings Inc.)傘下。
◯ビック社(Bic SA)→シェアは約5.2%。
上位3社合わせて、約83.7%のシェアを占有する。
つまり、カミソリ・替刃市場は、3社による寡占市場である。
この大手3社は、膨大なマーケティング予算と、緻密な消費者調査、
密接な小売店との関係を通じて、この巨大なシェアを盤石なものとしている。

この市場状況を見ると、新規参入なんて到底無理に思える。
しかし、実際には参入余地は存在していた。その余地とは、
カミソリ・替刃ユーザーの価格への不満
である。実際記事では、ジレット商品(フュージョンプログライドパワー)
の価格が紹介されている。それは、

カミソリが12.31ドル、4個入り替刃セットが19.29ドル

である。刃を毎週交換すると、毎月約20ドルかかることになる。
さらに、替刃がなくなると、約20ドルを一気に支払う必要がある。
支払い時に躊躇する人は多いだろう。

新規参入は、このユーザーの不満に対応する形で世界中で起こっている。
記事で紹介されている新規参入企業やサービスは以下の通りである

◯ダラーシェイブクラブ(Dollar Shave Club)→2枚刃カミソリ
(カミソリの柄は最初のみ)・5個の替刃で月3ドル(送料込み、以下同じ)、
4枚刃カミソリ・4個の替刃で月6ドル、6枚刃カミソリ・3個の替刃で月9ドル。
アメリカ。
◯ラズウォー(RazWar)→カミソリ・替刃・スキンケア商品・
その他備品で年間32.5ドル。ベルギー。
◯キングオブシェイブズ社(King of Shaves Co.)→3個のカミソリで月6ドル~8ドル。
イギリス。
◯ドルコ社(Dorco Co.)→使い捨てカミソリ2個をネット販売。

ドルコ社以外は、すべて定期購入スタイルを採る。
ユーザーの不満という外部環境の変化に対応することによって、
これらの企業・サービスは新規参入を果たした。

ただ、既存の大手3社も、この外部環境の変化に対応できないわけではない。
価格に不満を持つユーザーに向けに、低価格品を販売すればいいのである。
しかし、それができなかった。その原因は、
低価格品を販売することにより、既存品とのカニバリを起こすことになり、
その結果収益が悪化する懸念がある
からである。つまり、イノベーションのジレンマにより、
ユーザーの不満に耳を塞いだことになる。イノベーションのジレンマとは、

優れた特色を持つ商品を売る巨大企業が、その特色を改良する事のみに目を奪われ、
顧客の別の需要に目が届かず、その商品より劣るが 新たな特色を持つ商品を
売り出し始めた新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論。
大きな企業においては、規模の大きい既存事業の前に現れる新 興の事業や技術は小さく、
魅力なく映るだけでなく、既存の事業をカニバリズムによって破壊する危険があるため、
参入が遅れる。
(ウィキペディアより抜粋 http://goo.gl/V1AwO
ということである。カニバリを恐れることにより、
ユーザーの不満に真摯に対応しなかった。さらに、その寡占状態に胡座をかいて、
新規参入リスクに目をつぶっていた。これらにより、
スタートアップ企業などの新規参入を招くことになる。

さらに、新規参入が成功するには、ニーズを満たすだけでなく、
新規商品の良さが認知されなければならない。ちなみに、既存の大手3社には、
多額のマーケティング費用や密接な小売企業との関係により、
その商品の認知・販売を広げることができる強みがある。
この強みに対抗するために、次のような方法を採った。

◯認知を広げる方法→強みのIT技術を駆使し、
ユーチューブなどの無料動画で認知を広げ、
フェイスブックやツイッターなどのSNSを通じて支持者を獲得。
◯販売を広げる方法→ネットフリックスのような郵送による
定期配送スタイルを採ることにより、低コストで直販が実現。

実際に、ダラーシェイブクラブのユーチューブ動画を見たが、
とてもコミカルでつい見入ってしまった。この動画を見た後、
試しに定期購入を申し込んだ人も多いだろう。定期購入商品の場合、
この最初の購買行動が一番大きなハードルになることを考えれば、
コミカルな動画はその目的を十分果たしている。また、
DVDを郵送で定期配送するネットフリックスの普及は、
カミソリと替刃を定期郵送するというサービスの違和感を小さくさせている。

このように、ダラーシェイブクラブに代表されるカミソリ・
替刃の定期購入サービスの新規参入は、次のような要因によって、
成功したことになる。

1.ニーズの存在と解決→カミソリ・替刃の価格に対する消費者の不満
2.既存企業による追随リスク→大手3社による寡占も
イノベーションのジレンマにより参入余地あり
3.マーケティングの可能性→無料動画サービス・SNSにより低価格で
認知・販促
4.販路開発→郵送を使った定期配送により低コストでの直販を実施

出発点はニーズの存在である。ニーズがあるからこそ、
ニーズを満たす商品が生まれる。さらに、既存企業との競争にも
勝たなければならない。その点で、イノベーションのジレンマは、
新規企業にとって大きな味方となる。さらに、財務力に乏しい新規企業は、
できるだけ低コストで、商品の認知・販促を行わなければならない。
また、新規参入企業は、販路に乏しいことが多いので、
通販に頼らざるを得ないが、その場合低コストで行えるかどうかは、
売れ行き・利益に大きな影響を与える。この4点は、
カミソリ・替刃市場のみならず、市場への新規参入を考える場合に熟慮すべき点である。

Dollar Shave Club(すぐに動画が始まるので注意)
http://www.dollarshaveclub.com/
RazWar http://www.razwar.com/
King of Shaves Co. http://www.shave.com/home/
Dorco Co.  http://eng.dorco.co.kr/

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《今回のヒントのまとめ》
1)カミソリ・替刃市場は、大手3社により
80%以上のシェアを寡占されている。

2)それでもダラーシェイブクラブなどの新規参入が可能になったのは
ニーズの存在と解決、既存企業の追随リスクの小ささ、
低コストでのマーケティング、低コストでの販路開発が
可能になったからである。

3)価格に不満を持つユーザーの存在により、
低価格で定期購入する商品が開発され、イノベーションのジレンマにより
既存企業が影響しない参入余地が生まれた。
さらに、無料動画サービスやSNSにより、低コストで
商品の認知・販促が可能となり、郵送を使った定期配送により
低コストで直販が行えるようになった。

4)この4点をクリアすれば、カミソリ・替刃以外の市場でも
新規参入は可能になるだろう。

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編集後記
替刃の価格、日本でも高いですよね。
1000円以上もするから、売場でついつい迷ってしまいます。
ただ、持っているカミソリに合った替刃が決まっているので
、実際には選択の余地はありません。
もしかしたらに、プリンターのように、
互換替刃が出てくるかもしれないですね。
ドラッグストアやスーパーで販売されるか
どうかはわかりませんが。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!

 

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