ハーゲンダッツ店舗撤退が教えてくれる、プレミアム商品の売り方。

上海のハーゲンダッツ店舗By Kramchang

 

ハーゲンダッツの飲食店店舗が、日本から撤退するようです。

 

ハーゲンダッツジャパン(東京・目黒)は日本でのアイスクリーム店の運営から撤退する。25日に新浦安店(千葉県浦安市)を閉鎖し、「ハーゲンダッツ」の店舗はなくなる。高級アイス店の先駆けとして1984年に東京・青山に1号店を開いた。ブランドが消費者に浸透したとみてコンビニエンスストアなどでの販売に注力する。(2013年4月20日付 日経新聞朝刊)

 

学生の頃ハーゲンダッツで働いていたことがあるので、このニュースにはかなり驚きました。当時(1996年頃)、すでにハーゲンダッツの認知度はかなり高いものがありました。それは、

 

プレミアムアイスクリーム=ハーゲンダッツ

 

という認知です。だから、少し高いのは当たり前。新宿・歌舞伎町の店舗で働いてたため、飲み会帰りの酔ったお客様が、気前よく購入していたことが印象的です。デートの時だけでなく、飲み会帰りにもハーゲンダッツを食べてもらうことで、ブランド認知度を高めようという意図があったのでしょうか。

 

ハーゲンダッツがアイスクリーム店の運営から撤退するのは、ブランド認知が高まったから。店舗が無くても、テレビCMやその他広告で新商品のプロモーションを行えば、スーパーやコンビニで購入してもらえると、判断したのです。店舗の存在によって、それほど強い認知度を獲得できたのです。

 

スーパーやコンビニで販売される商材の場合、ブランド認知を高める方法として、テレビCMやその他広告・試食・サンプリングなどが採られます。しかし、そのような方法では、さほど認知度が高まらないのか、現在では店舗を出店するメーカーが増えています。例えば、カルビー。カルビーは、自社商品のブランド認知を高めるために、calbee+(カルビープラス)という店舗を出店しています。カルビープラスの一部の店舗では、作りたてのポテトチップスが食べられます。作りたてのポテトチップスは、スーパーで購入できません。この作りたてを食べられるという特別な体験により、カルビーは湖池屋とは違いを消費者に印象付けているのです。その結果、消費者は、スーパーで価格に関係なく、湖池屋ではなくカルビーの商品を選んでくれることになります。

 

このカルビーの方法は、ハーゲンダッツとは逆のやり方です。両社を比較すると、次のようになります。

 

【カルビーとハーゲンダッツのブランド認知方法の違い】

[カルビー]スーパーなど小売店で販売→テレビCMなどでプロモーション→直営店舗でさらにブランド認知度を高める

[ハーゲンダッツ]直営店舗で販売・ブランド認知度を高める→スーパー・コンビニで販売→テレビCMなどでプロモーション

 

カルビーが小売店での販売から始められたのは、それがプレミアム商品ではなくレギュラー商品だったからでしょう。一方、ハーゲンダッツは、単価の高いプレミアム商品だったからこそ、直営店舗でブランド認知度を高める必要があったのです。もし、カルビーと同じ方法を取っていれば、値下げを余儀なくされ、ブランドが損なわれていた可能性があります。プレミアム商品だからこそ、直営店での露出が必要だったのです。

 

同じ事は、プレミアムビールのプレミアム・モルツにも言えるかと思います。プレミアム・モルツには、ブランド名を冠した直営店はありませんが、取り扱う飲食店は多くあります。この飲食店での露出を通じて、プレミアム・モルツの美味しさ・他ブランドとの違いを消費者に理解してもらうことに成功し、これがプレミアム・モルツの爆発的人気に火を付けたのだと思います。その結果、特に値下げすることもなく、スーパーやコンビニで売れるようになったのです。

 

このように考えると、ハーゲンダッツの販売手法は、プレミアム商品販売のお手本のようです。プレミアム商品を単価の高い商品に広げても、ハーゲンダッツ式販売手法は効果を発揮するのではないでしょうか。

 

販売員の付かないセルフサービス型小売店では、商品選択を消費者に委ねるしかありません。そのような環境で自社商品を選んでもらうには、商品の良さやブランドを消費者に伝えるか、値段を競合品よりも下げなければなりません。特に、単価の高い商品の場合、値下げの効果は低いので、商品の良さやブランドを伝えるしかないのです。その方法として、直営店舗は大きな効果を発揮してくれます。ハーゲンダッツ式販売方法は、プレミアム商品や単価の高い商品で、今後も活かされるのではないでしょうか。

 

 

☆今日のまとめ☆

直営店舗の運営を通じてブランド認知を高めたハーゲンダッツの方法は、プレミアム商品や単価の高い商品の販売に今後も力を発揮するのではないか。

特に、スーパーやコンビニなどセルフサービス型小売店で販売する場合、価格競争に陥らないためにも、直営店舗のハーゲンダッツ方式は効果を発揮するだろう。

 

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☆    今日のこぼれ話☆

ハーゲンダッツ歌舞伎町店では、1年ほど働きました。

女性の多い職場で楽しい思い出の方が多いですが、厳しく教育されたことも記憶にあります。

確か、赤坂のお店へヘルプに行った時でしょうか。

言葉遣いがおかしいということで、マネージャーから指摘を受けました。

また、原価の高いアイスクリームを使っていたからでしょう、ほぼ毎回計量して提供していたのも、懐かしい思い出です。

店舗がなくなることは、本当に残念ですね。

無くなるとわかっていれば、もっと利用すればよかったなぁ。

 

☆    最近気になった商品☆

先日、セブン-イレブンで見つけたアイスクリームがこちら。

ハーゲンダッツではなく、コールド・ストーン・クリーマリーのアイスクリームです。

コールド・ストーン・クリーマリーも、ハーゲンダッツ方式でアイスクリームの卸販売に力を入れるのでしょうか。

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