小僧寿しチェーン低迷から学ぶべきこととは?
by courtesy of Chie Gondo
株式会社小僧寿しの代表が交代しました。
持ち帰りずし大手の小僧寿しは木村育生社長(55)が退任し、大西好祐氏(50)が12月3日付で新社長に就任する人事を発表した。「小僧寿しを復活させる」とIT(情報技術)業界から外食業界に転身した木村氏の目標は夢物語に終わった。今後は米国で弁護士として活動していた大西氏の経験を生かして、小僧寿しの海外展開に力を入れていくという。(2013年10月7日付 日経MJ)
業績悪化による引責辞任です。この記事を取り上げたのは、他業界からやってきた前社長の木村さんに期待していたからであり、この失敗事例から学ぶべきことがあると考えるからです。
子供の頃は店舗をよく目にした小僧寿しですが、今ではほとんど目にしません。だから、どのような店舗運営なのか、どのような商品・サービスを提供しているのか、実際全く知りません。公式サイトに掲載された情報やマスコミ情報からの推測になりますが、その失敗要因が浮かび上がってきました。
もちろん要因を一つに限定できませんが、一番の要因は、
商品が差別化できなかったから
ではないでしょうか。
公式サイトのメニューや日経新聞の情報から、小僧寿しは次のような特徴を持つ飲食チェーンであることがわかります。
【小僧寿しの特徴】
[商品]持ち帰り寿司
[価格]低価格
[ターゲット]子供連れの家族
[立地]地方の郊外
低価格で提供する持ち帰り寿司チェーンなのですが、その特徴が低価格以外に見当たらないのです。一方、競合する回転寿司チェーンやコンビニでは、無添加(くらコーポレーション)や利便性(コンビニ)など、価格以外の特徴が必ず存在します。この価格プラスαの差別化ができなかったことこそが、小僧寿しチェーン低迷の要因ではないでしょうか。
さらに、低価格という特徴を持つにもかかわらず、その姿勢はチグハグ・中途半端と言うしかありません。
【小僧寿しチェーンのチグハグ・中途半端な低価格戦略】
[価格設定]1円値下げ→中途半端で誰にも大きなメリットがない
[商品]豪華食材のおせち→特別安いわけでもなくチグハグ
低価格で押すなら、競合に負けない価格設定をするべきなのですが、原材料コストの上昇など外部環境の悪化によって、そういう思い切った施策を打てなかったのでしょう。さらに、業績が悪いだけに、その余力もないという悪循環にはまっていたと言うこともできます。
業態自体が、低迷の要因なったとも捉えることができます。
【業態自体が小僧寿しチェーンの低迷要因】
持ち帰り業態→サービスによる差別化余地が小さい、回転寿司・宅配寿司・デパ地下・コンビニなど競合が多い
持ち帰り業態自体が、そもそもまずかったのかもしれません。持ち帰り業態で店側が行うのは、注文に対して商品を用意し提供するだけです。来店は顧客自身が行い、調理後の後片付けの顧客自身が行います。この守備範囲の狭さが、サービスによる差別化余地を小さくし、価格・商品以外での差別化を難しくさせてしまいます。その結果、価格競争に陥りやすくなるのです。
また、サービス余地が小さいために、より大きなサービス余地を持つ業態の参入が容易に行われます。例えば、回転寿司。回転寿司は、注文した商品を提供するだけでなく、その場で食べられるサービスも提供しています。この中で、注文した商品を提供することだけを取り出せば、容易に持ち帰り商品として提供できるのです。実際、ほとんどすべての回転寿司店は、持ち帰り商品としても寿司を販売しています。このような競合がひしめくレッドオーシャンだからこそ、小僧寿しは業績低迷からなかなか抜け出せなかったではないでしょうか。
これらの小僧寿し低迷要因から、次のようなことが学べるのではないでしょうか。
【小僧寿しの低迷から学べること】
[商品]低価格以外で差別化をする
[業態]できるだけサービス余地を大きくして、価格競争・競争激化を回避する
ターゲットから低迷要因を考えることもできます。それについては、次回に持ち越したいと思います。
☆今日のまとめ☆
小僧寿しチェーンが業績低迷から抜け出せないのは、低価格以外の差別化ができなかったから。
また、持ち帰りという業態自体が、サービス余地が小さいため、価格競争・競争激化を導きやすかった。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
前社長の木村さんは、外食未経験者のため従業員になかなか理解されなかったことも、敗戦の弁として述べられています。
マクドナルドの原田さんのような、トップダウン型を目指されていたのでしょうか。
グローバル企業のマクドナルドとドメスティックな小僧寿しチェーンでは、従業員のマインドに大きな違いがあったのでしょう。