ワタミが業績下方修正を余儀なくされた理由とは?
by courtesy of Jackson Boyle
ワタミは、外食ビジネスからシニア向けビジネスにうまくシフトしたと考えていたのですが、業績は深刻なほど悪いようです。今期業績の下方修正を余儀なくされました。
ワタミは25日、2014年3月期の連結純利益が前期比66%減の12億円になりそうだと発表した。従来予想は7%増の38億円だったが一転、減益とな る。天候不順に加え、店舗改装による集客効果が想定を下回り、居酒屋事業の既存店売上高が約6%減る見込み。不採算店を対象とした減損損失の計上も響く。(2013年10月25日 日経電子版)
外食企業にあるような、原材料高による減益が、ワタミの業績悪化の要因ではありません。不採算店の減損も純利益下方修正の原因ですが、そんな軽症ではないのです。というのも、売上自体が減少しているからです。
そこで、ワタミ外食部門の月次データを調べてみると、恐るべきことがわかりました。
【ワタミ月次データからわかること】
[全店・既存店売上高]6ヶ月連続のマイナス
[全店・既存店客数]6ヶ月連続のマイナス
[全店・既存店客単価]6ヶ月連続のプラス
※2013年4月~9月
客単価はプラスに推移しているものの、客数の減少がひどいために、全店・既存店とも売上はマイナスに終わりました。既存店売上高がマイナスになるのは仕方ないにしても、全店売上高がマイナスということは、ワタミの外食部門は衰退していることになります。ちなみに店舗数全体が減少しており、市中でもプレゼンスも薄くなっていることがわかります。
恐らく、店舗を増やそうにも、人材が不足しており、さらにいい立地がなかなか獲得できず、店舗数を広げられないのでしょう。そこで、改装することで既存店のブラッシュアップを図るも、客数は戻らず、売上がマイナスから浮かび上がらないのが、ワタミ外食屋部門の現状だと思われます。
ワタミ外食部門の衰退要因は、10月26日付の週刊ダイヤモンドに掲載されていました。ワタミ独自の要因というわけではなく、居酒屋チェーンの衰退要因です。
【居酒屋チェーンの衰退要因】
[顧客]顧客ニーズの多様化・専門化
[競合]コンビニ・ファミレス・中華料理店などの新たな競合の出現
[自社]低価格路線と顧客ニーズとの乖離
詳しくは週刊ダイヤモンドを読んでもらいたいのですが、要は、居酒屋チェーンが価格以外の進化をストップさせている中、コンビニや居酒屋以外の外食業態が進化し、その一方で、顧客は飲食店に対しより高いレベルを要求するようになったということです。競合と顧客が進化するなか、居酒屋チェーンは進化しなかったために、衰退したのです。
個人的には、
コンビニの缶ビールと立ち飲み居酒屋に顧客を奪われたから、
居酒屋チェーンは衰退したのではないか、ということです。安く済ませたい時は、コンビニの缶ビールにし、少し美味しいものを食べたい時は、立ち飲み店に行く、というサラリーマンが増えたのではないでしょうか。一方で、居酒屋チェーンは、安さ訴求で均一価格店を増やしましたが、コンビニの安さには及ばず、そして美味しさでは立ち飲み店に及ばずで、結局顧客を失う羽目になったのです。
人口が減少したのだから、ある程度の客数減少は仕方ないと考えます。しかし、度が過ぎると、ワタミのように売上減少に歯止めが掛からなくなるのです。では、どうするか?何でもある総合型居酒屋市場は、明らかな供給過剰。新たな市場に進出するしか道はないように思えます。ワタミのような客数減少に苦しむ居酒屋チェーンが多いとすれば、今後総合型居酒屋の店舗数が大きく減少するかもしれません。
☆今日のまとめ☆
ワタミが業績下方修正を余儀なくされたのは、コンビニやファミレスなどの新たな競合の出現や顧客ニーズの多様化、低価格路線と顧客ニーズとの不一致による。
供給過剰の総合型居酒屋で戦うよりは、他の市場を目指した方がいいのではないか。
同じような企業が多ければ、総合型居酒屋の店舗は大きく減少するかもしれない。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
「総合」というのは、もう時代にそぐわないのかもしれませんね。
と思いきや、ファミレスは復権しているわけで、この違いを理解するのは、かなり難しい。