吉野家が牛丼値下げでも収益拡大を狙える、値付けの秘密とは?
前回は、吉野家の牛丼値下げにおけるメニュー上の工夫を取り上げました。今回は、価格について取り上げたいと思います。価格はマスコミでも報じられている通り、牛丼が100円値下げされて280円になったので、特に説明は不要のように思えます。しかし、実際にはそう単純な値下げではないのです。
値下げ当日に吉野家に行った私は、少しお腹を空いていることもあり、並では満足できないと感じ、当初大盛を注文する予定でした。しかし、値段を見て、その予定は変更することになりました。そこで、その時私が発見した、吉野家の牛丼価格変更二回して、まとめてみます。
【吉野家の牛丼価格変更】
[並盛]380円→280円
[大盛]480円→440円
[特盛]630円→540円
100円値下げされたのは並盛だけで、大盛は40円、特盛は90円の値下げでしかありません。よって、「100円値下げ」で来店したお客さんは、この価格を見てびっくりすることになります。通常、値下げ幅は、単価が大きくなるほど大きくなる傾向があります。率を同じにすると、単価と幅が比例するからです。もしくは、同じシリーズ商品ならば、単価に関わらず値下げ幅を同じにすることで、割安感を均そうとします。しかし、吉野家の牛丼値下げに関しては、この両方とも異なり、一番単価の低い商品で値下げ幅が最大になっています。この目的は、値下げのインパクトを大きくすることに他なりません。
ちなみに、競合する松屋・すき家の期間限定値下げをまとめると、次のようになります。
【松屋・すき家の期間限定牛丼・牛めし値下げ】
[松屋]一律30円値下げ
[すき家]一律30円値下げ
そして、牛丼・牛めしの並盛~特盛の通常価格をまとめると、次のようになります。
【吉野家・松屋・すき家の牛丼・牛めし通常価格比較】
[並盛]吉野家280円 松屋280円 すき家280円
[大盛]吉野家440円 松屋380円 すき家380円
[特盛]吉野家540円 松屋480円 すき家480円
マスコミでは、吉野家が松屋・すき家の牛丼価格に合わせたことで、牛丼の価格競争が再燃したと報じられていますが、実際には価格が等しくなったのは並盛だけ。大盛・特盛の価格は、依然として吉野家が一番高くなっています。
吉野家がこのような“怪奇”な値下げを行ったのは、もちろん収益悪化を回避するため。大盛・特盛まで松屋・すき家の価格に合わせれば、収益の大幅な悪化が避けられないと、試算されたのでしょう。だから、世間へのインパクトを狙って並盛だけを他社に合わせ、その他は小幅な値下げにしたのだと思います。
吉野家の値下げは、単なる他社への追随ではないことがわかります。値下げをしても、収益拡大を虎視眈々と狙っているのです。もしかしたら、並盛280円で来店する人は、量よりも品質を重視する可能性が高いと、吉野家は考えているのかもしれません。ならば、並盛値下げで獲得した顧客は、高単価商品(焼鳥つくね丼など)を将来注文してくれるでしょう。高単価商品の販売が増えれば、値下げによる客単価の下落を食い止め、客数増をそのまま売上増につなげることができます。
☆今日のまとめ☆
吉野家が、大盛・特盛の値下げ幅を並盛よりも小さくしたのは、牛丼値下げのインパクトを大きくするとともに、値下げによる収益悪化リスクを最小化するためだろう。
並盛280円で来店する人は、量よりも質を重視する可能性が高く、将来の高単価商品の注文につながると、吉野家は考えているのかもしれない。
マーケティング・ビジネスのヒントに関するブログも書いています
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
阪神強いですよね。
新井兄弟も、ついに目覚めたようです。
後は、福留さんとコンちゃんだけですね。
気になるのが、榎田の調子が良すぎることです。
榎田は、崩れるとホントに恐い。
☆ 最近気になった商品☆
先日、阪神百貨店のデパ地下でアメリカのピノ・ノワール(赤ワイン)を試飲しました。
たまたまアメリカワイン特集だったのですが、アメリカのピノ・ノワールは、果実味が強くて、個人的には好きですね。
今度買ってみようかと思います。
阪神百貨店のオンラインショップで調べてみましたが、ありませんでした。(残念)