【備忘録】くら寿司のビジネスモデルとサイドメニューの果たす役割

くら寿司のサーモン?by courtesy of Chie Gondo

 

日経新聞の近畿面(地方面)に、消費増税に臨む企業経営者のインタビュー記事が連載されていました。そこに、くら寿司を展開するくらコーポレーションの田中社長のインタビューが掲載されていました。その記事に、とても興味深いビジネスモデルに関する内容がありましたので、備忘録として記しておきたいと思います。

 

――アベノミクスの恩恵は外食産業に届いていますか。
「百貨店の高級商品とは違い、回転ずしのような価格帯の低い外食にはまだ届いていない。建 設業界が好調なので、関連産業の従業員などの消費は盛り上がる兆しがある。だが、消費増税までの一時的な駆け込み需要で終わる可能性もあり、今期 (2014年10月期)の純利益見通しは横ばいと固く見積もっている」(2014年1月25日付 日経新聞)

 

【くら寿司のビジネスモデル】

[収益商品]ラーメンなどの比較的単価の高いサイドメニュー

[集客商品]税抜き100円のにぎり寿司

[客単価]900円ほど(1000円を超えると割高感)

[差別化要素]バラエティーに富んだサイドメニュー、高速レーンを利用した鮮度の高さ、子供にとって楽しい回転レーン

 

【回転寿司業態が直面するチャンスと課題】

[チャンス]単価の高い付加価値商品の支持が高まっている

[課題]店舗数はほぼ飽和

 

くら寿司と言えば、全品100円(税抜き)の寿司と無添加というのを売りにしています。実際、どんな寿司を食べても100円という安心感はあり、食べ盛りの子供のいる家族の支持率は、かなり高いのではないでしょうか。ただ、それだけでは、収益性を高めることはできません。

 

そこで販売に力を入れているのが、単価の高いサイドメニュー。売上に占める割合は、現在2割程度ですが、2~3年後には3割に高めたいそうです。くらコーポレーションの収益向上の鍵を握るのは、サイドメニューと言っても過言ではありません。というのは、高速レーンによる鮮度向上や回転レーンの楽しさは、他の回転寿司チェーンも簡単に真似できるからです。しかし、本業ではないサイドメニュー開発は、そう簡単にできるものではありません。実際、人気サイドメニューのラーメンは、スープを10年掛けて開発したほどの本格派。サイドメニューの品質の高さや種類の多さで、今後差別化を進めていくのでしょう。

 

寡占化の進んだ回転寿司業界ですが、これ以上店舗数を増やす余地はないようです。そこで各社力を入れているのが、客単価の向上。店舗数が増えないと、客数の大幅拡大は難しいので、売上増には客単価の引き上げが欠かせません。客単価向上のための秘策が、単価の高い商品の導入です。かっぱ寿司の皿単価値上げや、あきんどスシローの189円のプレミアム寿司など、寿司一つ当りの単価引き上げを目指していることがわかります。

 

しかし、くら寿司はこれとは一線を画し、寿司一個当りの単価引き上げではなく、注文点数の増加による客単価引き上げを目指しています。これに寄与するのは、サイドメニューです。客単価引き上げというと、ついつい商品単価引き上げが頭に浮かびますが、高額商品の売れ行きがいいのは一部の業界・業態の話であり、差別化の難しい商材を扱う業界には、なかなかできることではありません。そこで、客単価引き上げのために行うのが、購入点数の増加。ついで買いを誘発する売場の設置などが、これにあたります。くら寿司は、100円寿司をウリにしているので、単価の高い商品の導入は難しいと判断したのかもしれません。もしくは、コンビニなどの総菜との競争を考えれば、割高感を出せば客数に響くと考えたのでしょうか。サイドメニューは差別化だけでなく、客単価引き上げにも貢献しているのです。

 

もう一つサイドメニューが果たす役割として、来店機会の増加も考えられます。おいしくいサイドメニューが豊富にあれば、寿司を食べたいと特に思わない時の来店も見込みます。例えば、小腹が空いて、少し麺を食べたいと思った時。ラーメン店に行けば、最低でも600円近く支払う必要がありますが、くら寿司なら、寿司一皿とラーメンを食べても、400円(税抜き)で済みます。サイドメニュー拡充により、ファミリーニーズ以外の小腹を満たすニーズや居酒屋ニーズを拾えることができるのです。この結果、客数を増やすことができます。

 

このように考えると、サイドメニューは、単に差別化のためだけでなく、客単価・客数の引き上げにも寄与し、その高い利益率を考えれば、収益性向上にも貢献してくれることがわかります。サイドメニューの売れ行きこそが、くらコーポレーションの収益に大きく影響するのかもしれません。

 

☆今日のまとめ☆

くら寿司のサイドメニューは、他チェーンとの差別化だけでなく、客数・客単価を引き上げることにも貢献してくれる。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

最近、スシローのCMが増えたように感じます。

高額消費に乗って、高単価寿司の販売に力を入れているようですね。

 

 

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