住商が撤退するネットスーパー、なかなか黒字にならない原因とは?
住商がネットスーパーから撤退するようです。
住友商事は1日、ネットスーパー事業をやめると発表した。成長市場にもかかわらず撤退を決めたのは、配送コストがかさみ黒字化が難しいと判断したためだ。首都圏では大手スーパーが同事業でしのぎをけずる。顧客の伸び悩みに加え、無料配送のサービス競争が重荷になっていた。
(2014年9月2日付 日経新聞朝刊)
住商のネットスーパーと言えば、ネットスーパーの草分け的な存在であり、スーパーの実店舗ではなく、倉庫から発送するという特異なタイプです。大量に在庫できる倉庫から送るので、大量受注にも対応できるというメリットはあるものの、販売する実店舗を持たない分、損益分岐点も高くなるというデメリットもありました。今回撤退した理由は、まさにそのデメリットが克服できなかったから。つまり、思ったほど利用者が伸びず、赤字体質から抜け出せないと判断したからです。
ネットスーパーがなかなか儲からないのは、住商だけのことではなく、業界全体に当てはまるようです。そこで、ネットスーパーが儲からない原因について、考えてみました。
【ネットスーパーが儲からない原因】
- そもそも利用者が増えないから
- 競争激化により顧客獲得コストが上昇しているから
- 店舗と同一価格のため、構造的に利益が出ないから
1について、そもそもネットスーパーの利用者は、スーパー利用者のごく一部であり、その利用者自体が増えていない可能性があります。ネットスーパーは、生鮮品を購入できるのが、通常のネット通販との大きな違いですが、生鮮品は今ではコンビニでも購入できます。よって、重い物を運びたくない消費者は、生鮮品はコンビニ、他の食品はロハコなどのネット通販で購入している可能性があります。ロハコなら雑貨も扱っているので、送料無料にするのはそう難しくないですから。また、生鮮品は自分の目で見て選びたいと考える人が多いことも、ネットスーパーよりもコンビニが支持される原因です。もしかしたら、子供が小さく買い物もできないママが、ネットスーパーの主要顧客なのかもしれません。少子化を考えると、顧客数が今後大きく伸びることは、期待できません。
2について、これは日経新聞でも言及されていました。ネットスーパー事業を行うスーパーが増加し、配送対象地域内で顧客の奪い合いが行われているようです。競争激化により、チラシ配布などの顧客獲得コストが増えれば、黒字化は難しくなります。
3について、これも日経新聞で説明されており、パッキング・配送コストが追加で掛かるにも関わらず、店頭価格と同一価格で販売されているのですから、儲かるわけがありません。一定金額を超えなければ送料が掛かる設定ですが、恐らく賞味期限の長い商品を多めに購入するなどして、送料を無料にする顧客がほとんどなのでしょう。たとえ送料無料設定金額が5000円以上だとしても、スーパーの低利益率を考えれば、利益のほとんどが輸送コストに消えることになります。さらに固定費が掛かるので、なかなか利益が出ないビジネスモデルとなります。構造的に利益が出にくい事業なのです。
上記3つを合わせると、将来的に拡大するでもなく、顧客獲得コストばかりが増える傾向で、もともと儲からないとなれば、撤退事業にリストアップされても不思議ではありません。そもそも実店舗から配送していないのですから、住商がネットスーパーをやめても、実店舗の売上にマイナスインパクトを与えることはありません。(実際には、スーパーチェーンの「サミット」ブランドを冠しているので、サミットに悪影響が出る可能性はゼロではありませんが。)
ネット通販もそうですが、やはり利益率の高い商材がないと、なかなか儲かりません。ネットスーパービジネスの敗因は、店頭と同一価格にしたことと、店頭と同じ商品をメインで販売したことにあるのではないでしょうか。ニーズがあることを考えると、今後利益率の高い商材を持つ企業(例えばホームセンターなど)が、ネットスーパーに参入する可能性があると予想します。
☆今日のまとめ☆
ネットスーパーが儲からないのは、利用者自体が伸びないから、競争が激化し顧客獲得コストが上昇しているから、店頭価格と同一価格で販売するので構造的に利益が出ないからではないか。
今後、ホームセンターなど利益率の高い商材を持つ企業が、ネットスーパーに参入するかもしれない。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
word2013を使って書いているのですが、まだ慣れません。
上のバーが消えたんですが、どこ行った?