総額表示を支持する消費者アンケートを信じてはいけない
by courtesy of davidd
日経新聞に、消費増税に伴う価格表示方法についての論評が掲載されていました。
消費税の価格表示について、先の国会で2014年4月から17年3月までは特例として消費税額を含まなくてもいい、特別措置法が成立した。この間に2度の 税率引き上げが予定されており、流通現場の負担軽減が目的だ。これにより税抜き価格と現行の総額表示が混在することになり、消費者には相当な混乱を招く恐 れがある。(2013年9月2日付 日経MJ)
この記事で言いたいことは、「価格に関して混乱を招く恐れがあるし、消費者も望んでいないので、総額表示にするべし。」というもの。外税表示を基本方針とした日本チェーンストア協会を批判しています。しかし、本当にそうなのでしょうか。
確かに、アンケート調査では、混乱を招くと回答した消費者は8割を超え、内税方式を望む消費者は9割に達しているので、消費者は内税方式を望んでいるのかもしれません。しかし、それは、小売全般での話。価格でモノを選ぶ可能性が極めて高いスーパーでは、内税方式にすることで割安感が薄れることになり、消費が減退するかもしれません。
例えば、無印良品とダイエーでは、価格に対する敏感度は全く異なります。無印良品では、そのブランドにお金を投じるのであり、他ブランドの商品と価格を比較することはほとんどないでしょう。だから、250円以上もするレトルトカレーが売れるのです。少々価格が上がっても、販売数量にはさほど影響しません。一方、ダイエーではブランド間の価格競争が発生するだけでなく、消費者の価格に対する期待も大きいので、1円違っただけでも売上は大きく変わることになります。
【無印良品とダイエーでの価格便感度】
[無印]ブランドが好きで購入、ブランド間価格競争はほとんど発生しない→価格便感度は低い
[ダイエー]価格に対する期待は大きい、ブランド間価格競争は激しい→価格便感度は高い
だから、スーパーにて、今198円で表示されている商品が、消費税率が8%になることによって204円表示になれば、明らかに売上は落ちるのです。特に、内税表示にすれば、98円商材は深刻な影響を受けるでしょう。98円商材は、ついで買いで売れる商品。100円でお釣りが来るというのが、大きな魅力なのです。この表示価格が101円になれば、割安感が薄れるばかりか、割高感が出てきます。なら「100円にすればいい」という意見が出ると思いますが、端数の約80銭は誰が負担するのでしょうか。
アンケート調査をそのまま受け取れば、内税方式の方がいいことになります。しかし、それは、消費者が混乱や計算を回避できるからそう回答したに過ぎません。消費を誘発させる割安感は、消費者が無意識のうちに感じるもので、今回のようなアンケート調査では、その影響が表れないのだと思います。
外税方式を採用するほど、スーパーにとって割安感は重要。さらに言えば、割安感は、今の消費者にとって、大きな選考基準なのです。
☆今日のまとめ☆
割安感が求められるスーパーにとって、内税方式で価格表示することは危険。
内税を求める消費者アンケートの結果を鵜呑みにしてはいけない。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
実際、2004年から内税方式が義務付けられた時には、売上減少に悩んだスーパーが続出しました。
販売現場にいれば、わかることです。