小分け精米のcocome、その可能性と課題とは?

飛ぶコシヒカリby courtesy of Emran Kassim

先日、三宮のダイエーでとある面白い商品を発見しました。それは、お米2合を商品化したcocome(ココメ)という精米商品です。この差別化要素をまとめると、次のようになります。

【cocomeの差別化要素】

[1]搗(つ)きたて

[2]使いきり

[3]食べ比べ

無洗米という特徴もありますが、これは他の精米にも見られるので、差別化にはなりません。1は、搗きたての精米をエージレスパックしたものであり、精米したての新鮮さを味わうことができます。さらに、2の使いきり商品のため、炊飯毎に新鮮な精米を食べられます。さらに、2合という使いきりの分量なので、2キロから販売される他の精米よりも、ずっと軽くなります。米の品種・産地ごとにラインナップされているので、食べ比べることも可能。炊飯毎に、違ったお米を味わうことができ、最低2キロを食べきるまで別の品種を味わえない従来品とは異なり、食べ比べが容易となります。

消費者のベネフィットから見ると、次のような長所を持つと言うこともできます。

【消費者ベネフィトからみたcocomeの長所】

[1]新鮮さ←搗きたて

[2]食べ比べという新しい付加価値←食べ比べ

[3]単価が低い←使いきり

[4]軽くて持ち運びが容易←使いきり

[5]見た目がおしゃれ

3について、2合約290グラムで208円から販売されており、2キロ1000円近くから始まる従来品と比べて、単価は低くなります。(グラム単価は高いですが)よって、少し炊飯したい人にとっては手の取りやすくなります。

5について、従来の精米商品は、袋に商品名・産地・品種が大きな文字で書かれただけの、地味なデザインの商品がほとんど。一方、cocomeのデザインは精米商品の中では斬新であり、米売り場の中でとても目立ちます。特に、cocomeのラインナップを並べた売り場の場合、かなり異彩を放っており、これまで米売り場を通り過ぎていた人も、立ち止まるほどでしょう。このデザインなら、一度買ってみようという消費者も出てくるのではないでしょうか。

1・2により、品質やその楽しみ方で差別化し、新しい付加価値を提供することができます。(ただし、「新鮮さ」は新米にもあり。)また、3・4・5により、購入ハードルを下げていることがわかります。これまで、1000円以上の支出やその重さ・個性のないデザインのために、米の購入をしなかった消費者を開拓でき、市場の拡大が期待できるのです。

このように、cocomeには消費量減少に直面する米穀市場を拡大させる可能性はあるのですが、一方で課題もないわけではありません。

【cocomeの課題】

[1]炊飯という面倒な手続きが依然必要

[2]味の違いわかりにくい

1について、利便性という点で言えば、従来品とは変わりません。炊飯器に入れてスイッチをいれるだけですが、炊きあがるまで待たなければなりません。時短ニーズの強い中で、この待つという手間が敬遠される可能性は十分あります。利便性という観点で言えば、サトウのごはんに代表されるレトルト米飯に軍配が上がります。

2について、ご飯はそのまま食べるのも美味しいですが、そのまま食べる人はほとんどいません。何かしらおかずと一緒に食べるのが一般的です。おかずと一緒に食べれば、ご飯自体の美味しさがわかりにくくなり、食べ比べの動機が薄くなる可能性があります。食べ比べという新たな付加価値をその差別化要素にしているcocomeにとっては、かなりの痛手になるのではないでしょうか。

この結果、cocomeの持つ長所よりもその弱点、つまり割高感がクローズアップされかねません。290gで210円弱の商品と、2000gで1000円の商品を冷静に比べると、圧倒的に前者は割高。2000gを2合なら7回分と考えれば、一週間に一度炊飯するとしても、2ヶ月で無くなります。そう大きな量でもありません。さほど大き過ぎもなく、割安ならば、2キロの従来品を選ぶ消費者も多いのではないでしょうか。特に、消費増税後は、購入頻度の高い分野から節約対象になるので、2キロを選ぶ確率はさらに高まります。

☆今日のまとめ☆

小分け精米のcocomeは、搗きたて・食べ比べという新たな付加価値を提供するとともに、購入ハードルを下げることで、米穀市場を拡大できる可能性を持つ。

一方で、炊飯という面倒な手間が依然必要であり、味の違いがわかりにくいことにより、利便性ニーズの高い消費者はレトルト米飯を、割安感を求める消費者は2キロの従来品を支持する恐れもある。

 

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☆    今日のこぼれ話☆

cocomeは、ダイエーの米売り場で異彩を放っていました。

陳列商品数を見る限り、それなりに売れているようでしたよ。

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