芦屋・グランドフードホール、独立型高級総菜店という業態の成功確率は?

grand food hallグランドフードホール公式サイトより

 

日経新聞の地方面で、とても興味深い食関連ビジネスが紹介されていました。

 

食品卸のスマイルサークル(兵庫県芦屋市)は、客の好みに応じて店内調理する総菜店「グランドフードホール」を展開する。まず13日、芦屋市に1号店を開く。和食、フレンチ、イタリアン、中華のシェフが店に常駐して、基本の総菜をベースに、使う食材や味つけ、塩の量などを調整できる。(2014年12月13日付 日経新聞朝刊)

 

総菜店グランドフードホールの差別化要素をまとめると、次のようになります。

 

【グランドフードホールの差別化要素】

  1. 専門シェフが作った総菜を販売
  2. 総菜の食材・味付けのカスタマイズ可能
  3. 保存料無添加など安心・安全を強調
  4. スイーツ・パンなどお取り寄せ商品も販売
  5. 価格は高め

 

一言で言うと、高級総菜店という業態になるでしょうか。ただし、デパ地下にあるような高級総菜店が単独立地したというだけではありません。1のように、和洋中の専門シェフが店舗に常駐し、専門シェフ手作りの総菜を販売しています。さらに、総菜に使う食材や味付けをカスタマイズできるようです。つまり、デパ地下を超える高級総菜店なのです。

 

3・4・5は、グランドフードホールの公式サイトを見てわかったのですが、地場野菜を使ったり、保存料無添加の総菜を生産したりと、安全安心を全面に打ち出しています。餃子の王将の野菜・小麦粉の国産化など、原材料の安全安心ニーズを重視する方針は、現在の飲食業界のトレンドに沿っていると言えるでしょう。店舗で生産できないスイーツ・パンなどの商品は、仕入れで対応。これは、運営する食品卸・企画会社のスマイルサークルの強みを活かしたもの。調理方法・食材にこだわる分、価格は高めになります。

 

安倍政権が進める働く女性を増やすことは、総菜店にとって追い風。ただし、既存の総菜店の大部分は、24時間営業のコンビニを代表とする利便性追求型か、より一般的な割安型であり、高級総菜を販売する業態は、デパ地下以外にはあまり見受けられません。スマイルサークルは、ここに商機を見出したのでしょう。比較的富裕層が多い芦屋の山手側に立地したのも、単価の高い高級総菜を販売するからであります。

 

ただし、高級総菜店という業態が少ないのには、理由があるのではないでしょうか。その理由とは、当たり前ですが、なかなか収益が生まれないから、です。実は、高級総菜店にチャレンジした企業がありました。それは、ロック・フィールド。デパ地下でRF1を運営している、洋食屋さんを起源とする企業です。「地球健康家族」というブランドで、デパートの外に進出しましたが、思ったほど収益が上がらずに撤退しました。

 

デパ地下では成立する高級総菜店は、デパ地下の外でなぜ成立しないのか?その理由をまとめると、次のようになります。

 

【高級総菜店がデパ地下以外で成立しない理由】

  1. 普段利用のケの商品ではないから(デパートはハレの商品を販売)
  2. 単独店のため集客しにくいから(デパートでは店舗が集積)

 

1について、総菜など食料品は毎日の食べ物であり、ケの商品。だからこそ、ある程度の割安感が必要とされます。その分野に、高級総菜は入り込めません。一方、デパートは、高級ブランドなどハレの商品を販売する所。だから、高級総菜店はデパ地下で成立するのです。

 

成城石井やいかりスーパーなどの高級スーパーはうまくいっているじゃないか?高級スーパーでも、割安感を出す特売を行っています。高級スーパーは高級スーパーなりに、割安感を提供しているのです。割安感のない日常利用の食料品は、なかなか売れないというのが現状です。

 

デパ地下の総菜店にしても、混んでいるのは平日の閉店間際か週末ぐらい。割安感を出さずにハレの食料品を売るのは、とても難しいのです。

 

2について、デパ地下が楽しいのは、総菜店が集積し、独特の賑わいがあるからというのも一因でしょう。賑わいがあるからこそ、ついつい財布の紐が緩むのです。もし、単独立地ならば、そう賑わいは生まれません。ロック・フィールドの地球健康家族も、販売商品はRF1とそう変わらないのにうまく行かなったのは、デパ地下の賑わいがなかったからではないでしょうか。割安型総菜店ならまだしも、高級総菜店が単独で出店していたら、賑わいどころか集客も一苦労でしょう。

 

このように考えると、高級総菜店・グランドフードホールの成功確率は低いと言わざるを得ません。ただ、高級チョコレート店など単独立地型の高級店を出店してきたスマイルサークルだから、何か秘策があるのかもしれません。グランドフードホールが成功し、多店舗展開するようになれば、総菜業界のイノベーションと言えるのではないでしょうか。(大げさ!)グランドフードホールには、注目したいと思います。

 

☆今日のまとめ☆

高級総菜店のグランドフードホールの成功確率は、低いのではないか。

その理由は、普段食べる総菜は割安感が求められるとともに、集客が難しい単独立地だから。

 

アメリカビジネスの最新事情メルマガはこちら

ワインを知れば、おもしろい

WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません

日々気づいた雑感はTwitterで発信中

すいません、Facebookはほぼ引退しました

年5%で資産運用する方法はこちら

 

 

  • 今日のこぼれ話☆

めっきり寒くなりました。

そのためか、めっきりタイプミスも増えてきました。(悲)

 

芦屋・グランドフードホール、独立型高級総菜店という業態の成功確率は?” に対して2件のコメントがあります。

  1. 西野 センワ より:

    正確 且つ 一分の誇張もない論評は
    冷静で偏りのない熟達した記者の観点に
    天晴れと感心しました!

    何故なら 芦屋ブランドはあるものの
    芦屋エリアでの商売
    特に東山町エリアの成功率は非常に厳しい地域で
    あることを 長年居住している住民はほとんど知ってます。

    資本力と女社長の理念とポリシーは行動力ある情熱の知恵で
    なんとか 持ちこたえる最大の努力はされると
    思いますが

    今のスタイルでの営業では非常に厳しいものがあると
    言わねばなりません。

    1. ryotarotakao より:

      西野さん

      コメントありがとうございます。
      芦屋の山手側は、相当商売が難しそうですね。
      目の肥えた人も多く、地場の商店・店舗も多いからでしょうか。
      グランドフードホールは、とても興味深いビジネス形態なので、今後も注目したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です