クックパッドが野菜頒布会・やさい便を危険性

By JanneM

先日の日経産業新聞に、クックパッドの新事業に関する記事が掲載されていました。

レシピサイト運営のクックパッドは9日からインターネットを活用した食材の宅配サービスを全国展開する。農家や青果店がサイト内に出店する形で、クック パッドは会員管理や決済を手掛けて手数料を受け取る。宅配した食材で作れるレシピが検索できるなど同社の投稿サイトとも連動させる。月間利用者約1500 万人の同サイトをベースにネット通販事業に乗り出し、収益を拡大する。(日経産業新聞2012年7月6日号より)

このやさい便という事業の特徴は、

  • クックパッドが行うのは集客・販売のみ。出荷は各農家・農業団体が行う。→楽天と同じモール型通販
  • 一回きりではなく、定期的(毎週・隔週など)に届く頒布会方式
  • 各販売者が決めた野菜がセットで届く

もちろん、届きた野菜を調理する際には、クックパッド内のレシピを使うことになります。まだ地域限定(首都圏)で行なっている試験的なサービスなので、定かではありませんが、サイト内の説明・Q&Aを見る限り、

  • 一回でやめることができる
  • 一時休止・再開は自由にできる(ただし、販売店によって変更期限あり)

のようです。つまり、頒布会ほど制限のある販売方式ではなく、かなり緩い頒布会のようなのです。

クックパッドがこのような”野菜の頒布会モール”を開設したのは、

  • 1500万人にも上る膨大な顧客数
  • 膨大な数のレシピ

という強みを活かしてのこと。野菜は食材であり、ほとんどの場合調理されるので、レシピとの相性は抜群です。だから、野菜に目を付けたところは、オーソドックスとも言えます。

ただ、

今になってなぜECに進出するのか?

という疑問は残ります。そこで、クックパッドのIR資料を見たところ、2012年4月決算において次のような課題に直面しているものと思われます。それは、

  • 最大の収益事業である会員事業の頭打ち
  • マーケティング支援事業の変動の大きさ
  • 広告事業の伸びが加速

です。

会員事業では、有料会員から徴収する会費収入がその売り上げになります。こちらは、会員数に比例して伸びていきます。ただ、今後この伸びがあまり期待できないようです。

クッ クパッドはレシピの投稿サイトとして人気となり、月間利用者は1500万人を突破した。有料会員数は非公開だが、主婦や若い女性中心に順調に伸びてい る。しかし、このまま会員数の高い伸びを維持するのは難しいとみており、従来の女性中心の顧客を基盤にネット上の垂直型のビジネスモデルを構築することで 売上拡大につなげていく。(日経産業新聞より)

ま た、マーケティング支援事業では、クックパッドとのタイアップ販促に対して、販促を行った食品メーカーが負担する販促費がそのまま売上になります。これ は、食品メーカーから受けた販促規模・販促数に比例し、また景気に左右される食品メーカーの販促予算にも影響を受けることになります。だから、クックパッ ドの業績向上・知名度向上に関係なく変動し、さらにその変動が大きくなっています。ここ3年間でみると、マーケティング支援売上が最大だった四半期は、 2011年4月期のQ2と2010年4月期のQ4で、約3億円。最小だったのは、2010年4月期Q1の約2億円。直近の2012年4月期Q4は約2億 6500万円であり、順調に拡大しているとは言えません。

最後の広告事業については、課題というよりも期待に読み取れるかもしれません。しかし、広告収入に依存すると、景気の影響をもろに受けるようになります。その結果、クックパッド全体の収益が脆弱化しかねません。

これらの課題を克服するために、

  • 継続的な売上が見込める
  • 商品力に左右されない
  • 出荷などの労働集約的な作業が発生しない
  • 限界利益率が大きい(≒粗利益率が大きい)

という特徴を持つ、モール型・頒布会という方式を採るECを始めたのだと思います。ただ、課題がないわけではありません。

  • 後発組のため、出店者が魅力に感じるほどの集客力・販売力があるかは疑問。
  • ”緩い頒布会”ゆえに、継続的な売上につながらない可能性がある。
  • 収益が手数料収入になるので、売上規模が大きくなるまでに時間がかかる。

モール型で野菜の頒布会を行うのは、食のプラットフォームを作るという方針があるからです。この食のプラットフォームでは、

スポーツ
健康
農業
買い物
美容

の5分野と食とを結びつけたサービスを、1500万にも及ぶ会員に提供するようです。私としては、農業・ECまではわかりますが、スポーツ・健康・美容まで手を伸ばすことには少し違和感があります。レシピという最大の強みから、

  • クックパッドヘビーユーザーによる料理教室
  • クックパッド公認調理器具の開発・販売
  • 各種調理家電との連携
  • 海外(特にアジア)への進出(レシピ事業)

などの方が、よりわかりやすいのではないでしょうか。上場企業ゆえに、株主から成長・収益性の維持を求められているのかもしれません。しかし、成長を求めて拡大路線を採った結果、レシピという柱が脆弱になる危険性がある。

☆  今日のまとめ☆

クックパッドは、膨大な顧客数・レシピ数という強みを生かして、野菜のモール型頒布会に進出している。
モール型・頒布会という方式を採ったのは、食のプラットフォームを作るという方針のもと。
ただ、スポーツ・健康・美容など、レシピと結びつきにくい分野にまで今後手を伸ばそうとしているようにも思える。
この拡大路線により、レシピという強みが薄れれば、本末転倒だろう。

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☆  今日のこぼれ話☆

今回初めて、グーグルドキュメントを使って、この記事を書いています。
というのも、ワードでグーグル日本語が使えないから。
ついこないだまで使えたのに、なぜでしょう?
マイクロソフトに何か異変があったのでしょうか?

昨日飲んだビールがこちら。
バナナたっぷりのミックスジュースのような味でした。
辛口のビールが好きな人には合わないかもしれないですが、女性にはウケそうです。
私は大好きです。

☆昨日の目標→その結果☆
◎朝6時に起きる→◯
◎毎日情報を発信する→◯
◎毎日仕事以外の人に話掛ける→☓
◎腕立て・腹筋30回→◯
◎自宅のある12階まで歩いて登る、または自転車を30分以上漕ぐ→☓
◎部屋や家の掃除をする→☓
◎営業日誌を付ける→☓

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