鳥貴族はなぜ単一価格業態で生き残ったのか?
鳥貴族が日経MJの一面特集で取り上げられていました。
居酒屋不況の中、税抜き280円均一チェーンの鳥貴族が軽快に飛んでいる。2014年は大雪の降った2月以外は既存店売上高がプラスで、7月には株式の店 頭公開を果たした。けん引するのは創業者の大倉忠司社長。「関ジャニ・パパ」としても有名だが、浮ついたところは全くない。焼き鳥業界の「マクドナル ド」、コンビニエンスストアを掲げ、余計なことを「しない」経営を突き詰める。(2014年10月24日付 日経MJ)
鳥貴族の特徴と言えば、何と言っても単一価格。税抜き280円で全メニューを提供しており、言わば居酒屋業界のダイソー(100均ショップ)のようなもの。リーマン・ショック後、筍のように単一価格業態は増えましたが、ほとんどのチェーンはすべて撤退。生き残った鳥貴族もしんどいのかと思いきや、業績は好調のようです。
日経MJによると、生き残った理由は、
焼き鳥に特化し、品質向上に取り組み続けているから
二階や地下など低家賃の立地に出店するなど、コスト削減を徹底しているから
です。他の単一価格業態は、総合居酒屋で和洋中いろんなメニューを提供。原材料や調理方法が分散するので規模の経済が働かず、単一価格で一定の利益率を出すために原材料をケチったようです。一方の鳥貴族は、焼き鳥に特化したため、原材料に大量仕入れに成功。これが原材料コストの低減をもたらすので、単一価格での提供と収益性を同時に成立できているようです。
また、二階や地下の店舗が多いのは、家賃コストを低減するため。上場企業(上場したばかりですが)ながら社長室もないなど、コスト管理には抜け目がないようです。これも、単一価格業態で利益を出し続けている理由です。
ただ、単一価格業態で生き残った理由を、次のようにも考えられないでしょうか?
【鳥貴族が単一価格業態で生き残った理由】
コスパの高さと客単価の低さにより、総合居酒屋チェーンの顧客を奪ったから
このように考えるのは、鳥貴族が好業績である一方で、ワタミなどの総合居酒屋チェーンが依然不振から抜け出せないからです。この両極端の業績から考えると、総合居酒屋チェーンの顧客が鳥貴族にシフトしたと思われます。
そのわけは、鳥貴族の商品が、総合居酒屋チェーンと同等かそれ以上の品質を持つのに対し、メニュー単価が低いからです。しかも、客単価も鳥貴族の方が安いので、安く飲みたい時には、総合居酒屋チェーンよりも鳥貴族の方が満足度は高いのです。
では、この先鳥貴族の好業績は続くのでしょうか。原材料コストや人材コストの向上が今後続くと思われるので、値上げは避けられないでしょう。そこで顧客が逃げないようなメニュー開発ができるのかに、掛かっています。また、記事によると若者の顧客が多いようなので、人口減少の影響をモロに受けることになります。単一価格業態なので、値上げでもしない限り客単価の向上は見込めず、既存店売上を伸ばすには客数を増やさなければなりません。よって、若者以外に顧客層を広げられるかも、今後問われるかと思います。
焼き鳥ビジネスを考えた場合、鳥貴族がある以上低価格をウリにするだけでは、勝ち目はないでしょう。刺し身などチェーン店が出せないメニューや、シニア層が落ち着ける店舗デザインなど、低価格の集客商品を提供しつつ、客単価引き上げを図るというオーソドックスなやり方がうまくいくのではないでしょうか。例えば、大阪・梅田の軍鶏なんて、ビジネスとして参考になるお店です。
☆今日のまとめ☆
鳥貴族が単一価格業態として生き残れたのは、焼き鳥に特化し品質向上に取り組んでいるからであり、またコスト管理を徹底しているからである。
また、衰退している総合居酒屋チェーンから顧客を奪っているというのも、理由の一つではないか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
鳥貴族は一度しか行ったことがありません。
若者・学生というイメージがあって、なかなか入りづらい。
こういう潜在顧客、多いと思います。