ガイアの夜明けのぶっちぎり寿司・四十八漁場が示す、飲食業の新たな差別化手法
カンブリア宮殿に続き、ガイアの夜明けの録画分からも、いろいろ学べるところがありました。
【ガイアの夜明けの魚類流通特集からわかったこと】
- 豊中の個人経営のぶっちぎり寿司は希少魚(銘魚)で差別化
- エー・ピーカンパニーの四十八漁場(よんぱちぎょじょう)は、地場でしか食べられない珍しい鮮魚と新鮮さで差別化
- 両者の流通により、漁業業者・漁師は、本来廃棄・自家消費されていた魚類から収益を上げることができる
- 魚の販売単価が下がっているので、一手間掛けることで単価引き上げ
1・2の共通点は、大衆魚では価格競争に陥るから、大衆魚以外の魚で差別化を図っているところです。ぶっちぎり寿司は、少量しか漁獲できず市場に販売されない銘魚に着目。これをつかったにぎり寿司を一貫110円(税別)で販売することで、格安回転寿司チェーンとの差別化に成功したのです。
一方の四十八漁場は、漁場がある地元でしか食べられない少量の鮮魚に着目。新鮮な地場の魚を都会で食べられることで、飲食店だけではなく中食・内食とも差別化。ぶっちぎり寿司の事例同様、市場に出回らない魚なので、スーパーはもちろん通常の飲食店や鮮魚専門店(所謂魚屋さん)でも購入することができません。外食から中食・内食へのシフトへの対策にもなっている点は、すごいの一言です。
3について、これらの流通は、販売者である飲食店側だけではなく、漁師側にもメリットがあります。これまで売上にすらならなかった製品で収益を上げられるからです。言い方は悪いですが、ゴミが利益に化けるということなので、新たな投資も必要とせず、売上がそのまま利益に跳ね返ってきます。
4について、エー・ピーカンパニーの鮮魚バイヤーが張り付く先の漁師の言葉であったのですが、魚の単価が下がっているようです。かと言って、売上を保つために、販売する魚の量を増やせるわけではありません。自然に生息する魚類を獲っているのですから、自らの意志・投資によって漁獲量を増やせないのです。ならば、売上を維持するには、魚の単価を引き上げるしかありません。その方法として、
[1]エー・ピーカンパニーのように仲買抜きで直接販売する
[2]付加価値を付ける
の2つを上げることができます。後者について、エー・ピーカンパニーは新鮮さを保つために神経抜きを漁師に依頼します。神経抜きは難しい技術ですが、その技術を施した魚は、エー・ピーカンパニーが高く買ってくれるので、単価下落に悩む漁師にとってはありがたいことなのです。エー・ピーカンパニーは、単価を引き上げる方法の両方を提供できるので、多くの漁師と提携できるのでしょう。
今回の事例からわかることは、
外食業界では食材のよる差別化が進んでいる
ということです。逆に言えば、
料理方法による差別化は費用対効果が低い
と言えるかもしれません。調理方法は取得が難しい一方で、最新調理機器の登場で調理はより単純化しています。ミシュランシェフほどの技術を求めれば、高いコストが掛かりますが、顧客が美味しいと思えるほどの調理技術ならば機械で十分対応できるのです。一方で、ストーリーのある食材を使うことで、その内容を顧客に伝えることができます。消費者がストーリーを求めているならば、調理よりも食材で差別化する方が効果は高まります。
希少魚は、もともと廃棄・自家消費されていた魚なので、安価で仕入れができるという点も、飲食店に好まれる大きな要素です。しかし、もし希少魚の価格が上昇しても、その希少性ゆえ、大衆魚よりもプレミアムさを伝えやすいのではないでしょうか。希少性を求めた食材の差別化は、今後外食業界で広がるのではないでしょうか。
☆今日のまとめ☆
調理方法よりも食材による差別化の方が、費用対効果は高い。
しかも、食材にストーリーがあれば、それを顧客に伝えることで、そのプレミアムさを引き出すことができる。
だからこそ、食材の差別化が今後広がるのではないか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
エー・ピーカンパニーは、単なる外食企業ではなく、食材の生産から販売まで一貫して行う食流通業と捉えた方が良さそうです。
その異色さは、人材獲得にもプラスに働いているようです。